今年から相続税が増税になった。税金がかからない「基礎控除」が縮小され、今まで控除内のため、相続税がかからなかった相続財産にも、相続税がかかるケースが増えたのだ。そこで、
【2】親からの相続は準備する? しない?
特に夫から多額の財産を相続した妻が亡くなると、子供たちの控除はそれほど大きくないので、多額の相続税が発生する。
「相続は親が元気なうちに、何らかの対策を講じるべきです。実は小規模住宅の特例といって、親と同居している家は相続する時に評価が低くなる制度があります。相続した人が故人と一緒に住んでいた場合、相続人の生活の基盤であることが考慮され、土地の評価額を一定額まで下げてもらえる。敷地面積が330平方メートルまでだと、税金の評価額が80%減額されるんです」(荻原氏)
二世帯住宅として認められるには玄関が一緒でなくてはならない、家のどこか1カ所で二世帯が行き来できなくてはならない、などの条件があったが、こうした条件も緩和されているのだ。
「今は別々の玄関、中も別々、つまり、アパートのような造りでもOKということになりました。仲の悪い嫁姑であっても、クリアできるようになったんです。これを利用しない手はないと思いますよ」(荻原氏)
将来、もしも親が亡くなってしまっても、親が住んでいた居住部分はアパートとして、誰かに貸すことができ、家賃収入まで得られるというわけである。
「二世帯住宅を建てる時には親と子のそれぞれがローンを組めば、親にも子にも収入がある場合、両者とも住宅ローン控除が使える。さらに、ローンの大きさにもよりますが、戻ってくる税金額が増える可能性があるんです」(荻原氏)
たとえ二世帯住宅用に中が分離されている住宅で、中が広すぎるという場合でも、シェアハウス方式にして人に貸すことができることも付け加えておこう。いずれにせよ、相続には準備が必要だ。
ところで、ついの住みかとして住むならば、
【3】住宅は買う? 借りる?
荻原氏が解説する。
「税制面を見れば、住宅ローン控除があるので買ったほうが有利です。金利は過去最低。物件価格は上昇という3点セットを提示されたら、早く買ったほうがいいと思うかもしれません。ところが、住宅産業には『2019年問題』があるんです。日本の世帯数は19年の5307万世帯をピークに下がり続け、35年には4956万世帯へと減少していく。結果、将来的には空き家が増えます。地方へ行くと、この空き家率はさらに上がるので、親の持ち家が空き家になることが想定される方はもちろん、焦らず賃貸に住み、頭金でもためながら先行きを見たほうがいい」
「そろそろ家を買おうかなと思ったら読む本」(洋泉社)が12月25日に発売される住宅ジャーナリストの小菊豊久氏も空き家に目をつけたうえで、賃貸を推奨する。
「地方へ行けば、広い住宅が2万~3万の安い賃料で借りられる。リタイア世代にはうってつけの物件が豊富にあるんです。自治体も空き家バンクにそうした物件を登録して、人口流出に歯止めをかけようとしています。マンションを購入して、バカにならない管理費や修繕積立金を払うより、リーズナブルな地方の一戸建を借りるのがお勧めです」