●ゲスト:世良公則(せら・まさのり) 1955年12月14日、広島県生まれ。77年11月、世良公則&ツイストとして「あんたのバラード」でデビュー。以降も「宿無し」「銃爪」「燃えろいい女」などヒット曲を連発。char、原田真二らとともに「ロック御三家」と呼ばれる。ツイスト解散後はソロに転向、同時に俳優業も本格的に開始。テレビドラマ「太陽にほえろ!」のボギー刑事役ほか、さまざまなテレビドラマ・映画に出演。第10回、第22回の日本アカデミー賞で助演男優賞を受賞。昨年放送されたテレビドラマ「下町ロケット・ガウディ編」では、主人公と敵対する医師を演じて話題に。2月6日には「世良公則 60th Anniversary LIVE『Birth~タカガウマレタヒ~福岡』」を、福岡サンパレスホテル&ホールで開催。
大ヒット曲「あんたのバラード」で衝撃のデビューを飾り、日本のロックシーンを大きく変えた世良公則。俳優としても活躍し、あの話題作「下町ロケット」での悪役ぶりも印象的だった。還暦を迎えても衰えぬ硬派なロックスピリッツを前に、あの天才テリーも背筋を伸ばす!?
テリー 昨年出演されたドラマ「下町ロケット」(TBS系)は大好評でした。
世良 ありがとうございます。僕は阿部(寛)さんたちと敵対するヒール(悪役)の医師・貴船教授役でしたから、おかげさまで各方面から「お前、最低だな!」と言われて(笑)。
テリー でも、役がハマってたってことですから、逆にうれしいですよね。
世良 そうですね。小泉(孝太郎)さんを中心とした僕らヒール軍団は6話からの出演だったんです。つまり、すでにまとまりが出来上がっている撮影チームに途中参加しなければいけなくて、そういう意味でも気合いは入りましたね。
テリー 例えば、何かやられたりとか?
世良 まず現場で衣装に着替えるじゃないですか。そしたらヒール軍団全員で並んで体幹運動をするんです。「ヒール軍団、ファイトォ!!」みたいな感じで。
テリー ええっ、それはおもしろい!
世良 こちらもきちっとチームワークを作っておかないと、主人公チームが生きてこないですからね。
テリー いい現場って、撮影前の雰囲気作りもうまいんですよね。
世良 特に小泉さんは初めての悪役ということで、いろいろと悩まれていた部分もあったと思うんですよ、セリフも多かったしね。ですから、ヒール軍団のトップである彼をサポートしていくのが僕らの使命、みたいな意識はありましたよ。
テリー なるほど~。
世良 小泉さんの様子を見ながら「今、セリフがちょうど頭の中に入ってる時だから話しかけちゃいけないな」とか「緊張感をほぐすために話しかけたほうがいいのかな」とか、けっこうみんなで気を遣って現場のムードを作っていました。
テリー ヒールなのに、心が温かい集団だね(笑)。
世良 平(岳大)さんにしろ、瀧川(英次)さんにしろ、ヒール軍団はみんなふだんはすごく紳士的で優しい人たちですから。現場はいつも温かい空気でしたよ。
テリー 世良さん自身は、演じた貴船教授という役をどう考えていましたか。
世良 監督やプロデューサーと話したのは、「基本的には医者ですから、ただの悪人ではないだろう」と。物語に登場する前から人の命を助ける喜びを味わってるし、救えなかった悔しさや、むなしさも経験しているはずなんです。
テリー うん、誰だってまずは人命を救いたくて医者になるんでしょうから。
世良 ただ、大学病院という組織の中で、自分がやりたいことや上を目指すと、やっぱり他者に勝つ必要が出てくる。負けが許されない世界にいるうちに、いつしか優しさや思いやりが二の次になってしまった。大切にするものの優先順位が変わってしまったんですね。
テリー あ、それ、すごくわかるなぁ。
世良 主人公チームは「失敗しても仲間と力を合わせれば何度でも立ち上がれるんだ」ということを信じている男たち。だけど貴船は「一度負けたら全て失う」という思いで、常にゼロか100かの精神で戦っている男なんです。そういうバックボーンを持っているから、しゃべる時には表情をまったく変えないんじゃないかとか、いろいろと考えながら演じていましたね。