プロテニス選手のマリア・シャラポワが、禁止薬物「メルドニウム」の使用を告白し、出場停止処分を受け入れると表明した。シャラポワは10年以上にわたって医師に処方してもらっていたと語っているが、ドーピング事情に詳しいスポーツトレーナーは、この釈明は怪しいと語る。
「心臓病の治療薬であるメルドニウムは競技力を向上する効果でも知られており、製薬会社のあるラトビアでは主要な輸出品になっているなど東欧やロシアではポピュラーな薬物です。しかし、日本やアメリカでは医薬品として認可されていないのが現実。シャラポワはロシア出身とはいえ6歳からアメリカに住み続けており、永住権も持っています。そんな彼女が治療目的でメルドニウムの処方を受けていたとは信じがたいですね」
そんなシャラポワのケースは日本人選手にとっても対岸の火事ではなさそうだ。メルドニウムは1月1日に世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の禁止リストに追加されたばかりで、それまでは法律違反薬物ではなかったのである。前出のスポーツトレーナーはこう語る。
「日本では『ドーピングは邪道』という意識が強く、法律違反薬物とは無縁という意識の選手や指導者が多いのですが、それゆえに摂取してしまうケースがあるのです。欧米ではたとえ市販薬でも選手や指導者だけの判断で服用することはありませんが、日本では葛根湯が原因で失格になったケースもあるほど。今回のメルドニウムも旧ソ連諸国ではごく普通に処方されている薬なので、摂取経験のある日本人がいないとは断言できません」
最近は外国人コーチの指導を受けたり、国外に拠点を設けるアスリートも少なくない。その環境では法律違反薬物に対して今まで以上に高い意識が求められるだろう。今夏に迫ったリオデジャネイロ五輪を前に、日本からドーピング検査の失格者が出ないことを祈るばかりだ。
(金田麻有)