桜の花びらが舞う季節は、アイドルたちにとって「卒業」の2文字が胸に迫ってくる。熱く、はかなく過ごしたアイドル期から旅立つ日がやって来た‥‥。そんなグラジュエイションの名場面と名セリフの30年分をここに詳報する──。
80年代の前半まで、アイドルに「卒業」という概念はなかった。例えば「ふつうの女の子に戻りたい」の名言を放ったキャンディーズは「解散」であるし、白いマイクを武道館のステージに置いて別れを告げた山口百恵は「引退」である。
その記念すべき第一歩は、今からちょうど30年前、86年3月のこと。アイドルグループの革命となった「おニャン子クラブ」から、ソロデビュー第1号の河合その子と、中島美春の2人が初めて「卒業」を宣言。
美少女研究家の高倉文紀氏が解説する。
「インパクトは大きかったと思います。それまでグループの『解散』や『脱退』はあっても、人気絶頂の渦中に『卒業』という言葉を使った。実はおニャン子自体が3年足らずの短い活動期間でしたが、それでも人気のメンバーが1年で卒業するのは『え、もう?』という衝撃を与えた」
2人の卒業に合わせ、中島がリードボーカルを取る形で「じゃあね」というシングルを発売。これがアイドルグループにとって、卒業ソングの雛型となった。
「さらに2人の卒業をメインに据えたコンサートも、ムックになったり、ビデオになったりと、今につながるビジネスモデルになりました」(前出・高倉氏)
おニャン子を生み出した「夕やけニャンニャン」(フジテレビ系)は女子高生アイドルを中心とし、放課後のクラブ活動のノリを前面に押し出していた。番組の流れからいけば、3月に「卒業」という要素は不可欠だったのだ。