握手商法などの批判もあるが、それでも連続ミリオンセラー記録を塗り替えた「AKB48」は、音楽史に残るモンスターグループである。
10周年を迎え、すでに多くのメンバーが卒業していったが、やはり最大の衝撃は12年3月のコンサート中に発表した前田敦子だったはず。
「人気絶頂期に、グループの顔である彼女がライブで発表したのは、AKBの歴史を振り返っても有数の出来事。ただ、本人の中には『新旧交代をさせないと‥‥』という思いがあったのでしょう。そこから渡辺麻友がセンターになったりと、願いは届いたと思います」(美少女研究家・高倉文紀氏)
卒業を発表したさいたまスーパーアリーナの公演では、あらかじめ「重大発表!」がアナウンスされていた。初日に「初の東京ドーム公演」が発表されたため、ファンも胸をなで下ろしたが──、
「私は14歳の時に初期メンバーとして加入させていただきました。それは、私の人生にとって初めての大きな決断でした。そして今日、ここで2度目の大きな決断をさせてください。私、前田敦子はAKB48を卒業します」
まさしく、アリーナがどよめいた瞬間である。そして前田と並ぶ2大エースの大島優子は、13年の「紅白歌合戦」でサプライズ発表。この日はEXILE・HIROのラストステージや、御大・北島三郎の紅白卒業があらかじめ予定されていたが、それらを吹き飛ばしてしまった。
「昔なら考えられなかった。おかしいといえばおかしい」
ワリを食った北島の素直な感想である。
その大島と前田が顔をそろえたのは、まだ記憶に新しい15年の大みそかのこと。総監督である高橋みなみのラスト紅白に、ともにシークレットで登場したのである。
目を丸くして驚くたかみなだったが、今後、2度と同じ演出はできないという“最後の切り札”にも見えた‥‥。
こうした大物ではなく、ひっそりと去った増田有華の卒業も印象深いと前出の高倉氏は言う。12年12月17日の「AKB48 紅白対抗歌合戦」での1コマだ。
「彼女はスキャンダルが報じられたため、これといったセレモニーもなく終わるはずでした。ところが、アンコールの時に同じ2期生の大島が音頭を取り、ステージ中央に増田を呼び寄せた。5人ほどで囲んだ小さなセレモニーでしたが、会場のファンもあたたかく見守っていて感動的でした」(前出・高倉氏)
現役メンバーもいつかは「卒業」を決断する時期は必ず来る。今度はどんな名シーンが生まれるのだろうか。