「結婚して娘までいる」説も
藤本氏によれば、17歳の時、正恩氏は喜び組の公演を見た。喜び組は「万寿台芸術団」など、北朝鮮で最高峰とされる芸術団の中でも容姿、才能が優れた女性らで構成される。
喜び組の女性は金総書記と側近らだけが出席を許された秘密パーティで、水着姿で踊りを披露したり、お酌するなど接待役を務める。出席者は朝鮮人民軍や、朝鮮労働党のエリートたちだ。元北朝鮮高官によれば、
「酔いが回ってくると、喜び組の女性たちは、『特別なサービス』も行っていた」
文字どおり、喜ばせていたわけだ。正恩氏は喜び組の公演中、豊満な女性をまじまじと見ながら、「胸が大きいなぁ‥‥」
と身を乗り出し、相好を崩したという。先の女性歌手も豊満タイプだったが、どうやら正恩氏はいわゆる巨乳好きのようである。
藤本氏はこの一件を、「その瞬間、私は、(正恩氏が)女に関心がないわけではないんだ、と安心した」
と振り返っている。
一方で、結婚説もまことしやかに流れた。母親によく似た女性と結婚し、娘までいる、との噂が2年前に報じられているのだ。相手女性の素性についても具体的で、父親は大学教授、母親は病院の看護師長で、ともに忠実な労働党員だという。女性は金日成総合大学を卒業後、政治指導員的な立場で大学院に在籍していたとも伝えられた。
この他にもモデル並みの容貌をした女性の写真が、正恩氏の交際相手として広くネット上に出回った。日本でも話題となり、私もとある関係者から「これは本物か」と聞かれたことがある。結論から言うと、残念ながら真相はわからない。
女性と縁が深かった父親の金総書記は死去するまで、ほとんど単独で行動していた。海外から夫婦で来賓があっても、自分1人で出迎えに出ており、妻は姿を見せなかった。正恩氏も今のところ、公式な場には1人で現れており、結婚が事実かをうかがうすべは乏しい。
今年4月、正恩氏は党の第一書記に収まり、正式な指導者になった。その他、国防委員会第一委員長、軍の最高司令官と、ありとあらゆる肩書を手に入れている。とすれば、権力欲を持つ女性たちが父親にしたように、手練手管を使って正恩氏に言い寄ることは間違いない。妻の座を手にすれば一族は安泰で、子供たちも将来を約束されるからだ。
実際、北朝鮮からの映像を見ると、正恩氏が女性に取り囲まれたり、女性兵士の中で歓談する姿を簡単に見つけることができる。ぽっちゃり型の正恩氏は、北朝鮮では女性受けするタイプだ。「英雄、色を好む」と昔から言われるが、正恩氏が、父がやったような略奪婚をしても、とがめる人間はいないだろう。
まだ30歳に満たない若さを考えると、今後、そちらの暴走も心配になる。