そもそも、ビールと発泡酒との違いは麦芽の使用量にある。酒税法によりビールは原料である麦芽の使用率が3分の2以上であるのに対し、発泡酒は25%程度。そのためビールよりも酒税が低く、価格が安く抑えられている。
「ビールに比べて軽い風味でも、糖質量やカロリーはビールと同程度、あるいはそれ以上というものも少なくないので、たくさん飲んでも太らないと勘違いすることは危険です」
むしろビールのほうがいいということだが、発泡酒の場合もカロリーを上下させる源はアルコール度数と糖質量。度数が高ければカロリーも高いと考えればいい。糖質量が同じなら、
「極端な話、3%の発泡酒なら2本飲んでも大丈夫だけど、7%なら1本だけ、ということです。そのため早く酔いたいのか、あるいはダラダラ飲んでいたいかによっても、チョイスが変わってくると思いますが、アルコール度数と糖質量を基準に考えると、わかりやすいはずです」
安中氏いわく、「健康を保つために程よい1日のアルコール摂取の目安」は40グラム程度だというが、
「生ビールなら中ジョッキ2杯(1杯が20グラム)、ロング缶なら2本。これが健康を維持するための許容範囲です。ただし、ハメを外したい日もあるでしょうから、そんな時はビールは2杯までにして、あとは糖質を含まない焼酎やウイスキーにする。ただし、飲みすぎれば当然、健康を害すリスクも増えるので、ハメを外すのはせいぜい週に1回と決めて、翌日は必ず休肝日にすることがポイントです」
そうした一般的な健康論は理解できるが、やはりたった2杯では飲んだ気がしない。安中氏の著書のごとく、我慢せずにビールを飲むには‥‥その正しい飲み方を知ることが重要だ。
ビールの醍醐味といえば、何といっても最初の1杯。だが、そんな至福の瞬間が、危険をはらんでいる。
「ビールに含まれる糖質量は、血糖値を急上昇させるほど多くはありません。でも、空腹時にスナック菓子をつまみに、乾いた喉に一気に流し込む、となると話は別。これにより、体には『さあ、脂肪をため込むぞ!』というスイッチが入ります。さらに空腹時のアルコール摂取は酔いが回りやすくなっていますから、おつまみのドカ食いにもつながる。これは百害あって一利なし、です」
血糖値が急上昇している状態は、血管の中に小さなガラスの破片がいっぱい通っているようなもので、
「朝の山手線のホームに並んでいる乗客が血糖で、電車が細胞。で、電車に乗客をグイグイ押し込んでいる駅員さんがインシュリンで、それを毎日やらされて駅員さんが出社してこなくなる状態が糖尿病だと考えてください。つまり、この状態は体にとんでもなく大きな負担をかけているということです」
糖尿病ががんや心筋梗塞、さらには認知症などを誘発することは知られているが、グビッというあの1杯が実は「地獄」への第一歩だったのだ。