政治

田中角栄 日本が酔いしれた親分力(1)40までにやるだけやって死にたい!

20160623r1st-2

 様々な問題を抱え、混迷の事態に直面している現在の日本。この状況を打破する強いリーダーシップを求めるかのように、今再び昭和の宰相・田中角栄に注目が集まっている。時代を大きく動かした「男の器」を、長年に亘り取材を重ねたジャーナリストが浮き彫りにしていく!

 リーマン・ショックをはじめ、日本に危機が訪れる度に、「もし角さんがいたら、どのような大胆な政策を打ち出すだろうか」という田中角栄待望論が強まる。東日本大震災に続き、今回、熊本大地震にも見舞われ、いっそう田中角栄待望論が出てきた。

 不思議なことに、「吉田茂が生きていたら」とか、「岸信介が生きていたら」との声は起こらない。吉田も、岸も、戦後総理大臣の内ではナンバー1か2かと評価は高い。むしろ、田中角栄より、総理としての評価は高い。にもかかわらず、危機に際しては、田中角栄待望論が出てくるのである。

 なぜか。田中角栄なら、それまでの政策の延長線でなく、大胆な政策を打ち出し、日本をガラリと変えてくれるのではないか。そう思わせるからである。

 実は、吉田も岸も、あるいは佐藤栄作も、池田勇人も、田中角栄のライバルで「角福戦争」を争った福田赳夫も、官僚出身の総理大臣である。

 田中角栄が総理大臣になった時、「今太閤」ともてはやされ、支持率が高かったのも、そのような期待があったからである。

 田中角栄は、1918年(大正7年)5月4日、新潟県刈羽郡二田村(現・西山町)に生まれた。田中家は、農村にはめずらしく農業が本業ではなく、父親の角次は、牛馬商を営んでいた。いわゆる馬喰であった。

 田中角栄は、地元の二田尋常小学校を卒業し、34年(昭和9年)3月27日、柏崎駅から上野に向かった。

 田中は、19歳で会社を起こす。37年(昭和12年)3月、神田錦町3丁目の角にある鉄筋コンクリート5階建てのアパートの1室を借り、そこを事務所とした。角栄の栄の字をとり「共栄建築事務所」という看板を掲げた。田中は廊下に出て、何度も看板を見ながら、喜びに顔を火照らせた。小なりと言えども自分の城を持てたのである。

 田中は、周りの友人たちに常々言っていた。

「織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人の武将のうちでは、俺は信長のような生き方をしたい!」

 短くともいい、激しく燃え尽きたかった。

 田中の兄は、幼くして死んでいる。自分もどうせ長くは生きまい、と覚悟していた。実際、幼い時から体もあまり丈夫ではなかった。それ故、周りの者にも言っていた。

「俺は40までに死んでもよい。ただし、それだけのことはやって死ぬ!」

 共栄建築事務所の仕事は、機械の製図や、機械基礎の計算であった。墨田区本所に日本特殊機械という会社があった。その社の新工場と寮の新築や材料置場の設置、重機械の据えつけなど、一連の仕事がもらえた。

 その社の仕事だけでなく、次々に注文をとっていった。建築や設計にはまったくのド素人であったが、まさに怖いもの知らずであった。田中は、測量から試案の作成、設計、計算、仕様書の作成、工事業者の選定、工事監督と、何から何まで自分1人でやれるようになった。死にもの狂いで生きよう、と決めていた。苦しくはなかった。

 都電に乗るのも、1停留所間だと利用するが、2停留所間になると、利用しなかった。のんびり都電に乗っている時間に、もっとたくさんの仕事ができる。田中は金がなくても、仕事を早く済ませるため、タクシーに乗った。普通の者が3日かかる仕事は、2日で済ませた。

 得意先の玄関に、相手に見えるようにタクシーを横づけにするのも田中の手であった。いま扱っている仕事は、こんなに金をかけているんだぞ‥‥という相手へのデモンストレーションであった。相手の心理を読むのには長けていた。

作家:大下英治

カテゴリー: 政治   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
フジテレビ第三者委員会の「ヒアリングを拒否」した「中居正広と懇意のタレントU氏」の素性
3
3連覇どころかまさかのJ2転落が!ヴィッセル神戸の「目玉補強失敗」悲しい舞台裏
4
巨人「甲斐拓也にあって大城卓三にないもの」高木豊がズバリ指摘した「投手へのリアクション」
5
ミャンマー震源から1000キロのバンコクで「高層ビル倒壊」どのタワマンが崩れるかは運次第という「長周期地震動」