若さばかりが女優の特権ではない。その肉体が〈オンナの履歴書〉であるならば、三十路、四十路と重ねることで、また新たな価値もめばえるはずだ──。
大原麗子(享年62)は、胸の小ささにコンプレックスを感じていたこともあり、ベッドシーンをやらないことで知られていた。1度だけNGを除外したのが、37歳の時に撮った「セカンド・ラブ」(83年、東映)である。監督は女流映画の名手である東陽一で、大原は2歳年下の男(小林薫)と再婚する女の役。
2人が新居で励んでいると、ドアをノックする音。どうやら隣の部屋と間違えたようだが、気をそがれた夫は“中折れ”したようだ。
「うーん、もう‥‥」
シーツの下にもぐり込み、股間のあたりで首を動かすフェラを連想させるシーンにも果敢に挑んだ。そして再度の正常位では、大原のコケティッシュな声が高鳴ってゆく。
香山美子(72)は長寿番組だった「銭形平次」(フジテレビ系)で、平次の妻・お静役を長らく演じた。貞淑な妻のイメージを打ち破ったのが「江戸川乱歩の陰獣」(77年、松竹)だろう。役名は奇しくも「静子夫人」だが、SMを基調にした猟奇的な作品である。
「肉感的な体ではないけれど、ヌードの映し方がものすごく生々しく、特に胸もとのアップには乱歩作品特有の淫靡さを感じました」(映画ジャーナリスト・大高宏雄氏)
濡れ場と最も無縁な存在の女優が脱ぐありがたみを、当時33歳の香山が教えてくれたのだ。
さて、元バレリーナの草刈民代(51)が鍛えられたしなやかな裸体を見せたのは、何と47歳の時。夫である周防正行が監督を務めた「終の信託」(12年、東宝)でのことだった。
「自分の女房がほかの男と濡れ場をやっているところを撮る。この何とも言えない背徳感が、観客を変態チックな気分にさせます。草刈はグラマーなタイプではないが、映画の状況設定でエロい作品になりましたね」(映画評論家・秋本鉄次氏)
グラビアでは20代の頃から豊満なヌードを見せていた水沢アキ(61)だが、映像での濡れ場とは無縁だった。その禁断の扉を開いたのが、55歳で主演した「やさしい手」(11年、ファインフィルムズ)である。
水沢が演じたのは「手コキ」を専門とする風俗嬢。ドアの丸い穴から手を差し込み、見えない相手の股間をしごくという究極のサービス。
往年の体の張りはないが、それでも「お世話になった世代」には感激の初濡れ場であろう。
そして最後は、田畑智子(35)の「ふがいない僕は空を見た」(12年、東京テアトル)である。30歳で初めてヘアヌードを公開し、その翌年に「コスプレして若い男とのセックスに溺れる主婦」を演じた。「12歳で『お引越し』の主演を飾り、それから朝ドラのヒロインにも選ばれた。そんな子が色白で哀感のある体を持った女優になっていた。ドラマでは脇を固めることが多いけど、ヘアヌード写真集も含めて、何ともリアルなエロスを感じさせますね」(前出・大高氏)
昨年11月には自殺未遂騒動にも巻き込まれたが、次の作品で“吹っ切れた演技”を見せることになるだろうか‥‥。