セ・リーグ初の交流戦制覇を果たした巨人が、ペナントも一気にブッチ切り態勢に入るかと思われたやさきだった。なんと指揮官に女性醜聞、それも元暴力団員に大金を支払っていたという大スキャンダルが発覚したのである。被害者とはいえ、卑劣な脅迫の軍門にあっさり下ってしまった原監督のトラブル処理法をヤクザ組織の幹部は嘲笑した。
元暴力団員から突然の電話
6月21日、巨人・原辰徳監督(53)は、翌日のヤクルト戦に備えて現地入りした長野の宿舎で、選手、スタッフ全員を集めた。
巨人番記者が話す。
「前日にもジャイアンツ球場で選手たちと顔を合わせていたのに、きちんとした謝罪の場を設けたかった原監督は、わざわざ新幹線で移動したナインとは別行動を取り、車で長野入りした。そして宿舎で全員を集合させると、『迷惑をかけたので、ここで謝罪します』と改まって頭を下げたのです」
謝罪後、原監督は「球団は今、再発防止のために動いてくれているし、我々を正しく導き、守ってくれている。だから巨人軍の一員として、これからも報告の義務をしっかりと果たしてほしい」とも付け加えたのだが、前出の巨人番記者はこう話す。
「とある球団関係者は、『これはヤバイぞ。統制が取れなくなる危険性がある』と嘆いていた。これまで監督は、ミーティングなどで『ジャイアンツの一員として、ファンに夢を与えよう』というような、悪い言い方をすれば“きれいごと”をしゃべってきました。酒や女遊びなどで私生活が乱れた選手を冷遇する傾向もあり、名指しで苦言を呈される選手だっていた。かつての鹿取、伊原両ヘッドのように、監督に代わって選手を引き締める役回りが他にいればいいですが、現政権にはお目付け役がいませんからね。原監督みずからの言葉に説得力が低下してしまったことに、危機感を覚える声が出ているんです」
原監督が選手らに謝罪をしたこの日は、騒動を報じた「週刊文春」の発売日だった。
同誌によれば、原監督は現役時代だった88年、巨人が甲子園で試合をする際の定宿ホテルで働いていた女性と“深い関係”になった。当時はすでに現夫人と結婚していたから当然、それは不倫関係ということになる。
「しかも、記事にはその女性と交際が深まるにつれて、彼女が傷つくような“トラブル”が生じたと書いてあります。問題解決のための費用を原監督が用立てたという記述も意味深でした」(スポーツ紙デスク)
とはいえ、その後、月日が流れて女性が姿を消したこともあり、2人の関係は遠い過去の話となったはずだった。ところが、彼女は当時、原監督との交際やトラブルについて、克明な日記をつけていたのだ。そして、その日記が人を介して、暴力団関係者だった、記事中で「山本正志」とされる仮名の男の手に渡っていたというのである。
日記はさらに、山本からHなる舎弟に渡り、Hはビジネスでつながりのあった元暴力団員で、息子が現役のプロ野球選手だというKに相談。
なんと日記が“活用”された時には、あれから18年もたっていた。第2次政権をスタートさせたばかりの06年、原監督の携帯電話に突然、面識もないKから電話が入ったのだ。
そしてK、Hと強引に面会させられた原監督は、日記のコピーを提示され、要求されるがまま、球団や警察に相談することもなく、「1億円」もの大金を支払ったという─。
記事を読み、恐喝事情に精通するヤクザ組織の幹部X氏が口を開く。
「よくある恐喝の手口だわな。ブツが日記というのは珍しいが、政治家や相撲取り、それこそプロ野球選手なんかは絶好のターゲット。不祥事が世間に公表されたくない高額所得者に“証拠写真”を見せて『買ってくださいよ』と穏やかに言うのよ。“暴力団の影”を出したりしたら警察に飛び込まれるから、あくまで穏やかにやるんだ」
前出・X氏が続ける。
「美人局を仕込む場合もあるし、女の噂をかぎつけてから付け回して証拠を押さえる場合もある。もちろん、原のケースみたいに、“物証”がヤクザ者に回ってくることだってあるな。いずれにせよ、今回みたいに2人以上で脅すことが多い。1人が責めて、1人が抑えるんだ。今回の記事で出てきたKが、『表に出ないように私が解決する』なんて交渉してたのも抑え役だからで、脅しとは違うってアピールだろうよ。他にも複数のマスコミの名刺を見せて、『これだけの社が動いてるけど、俺が止めてやる』なんて持ちかけるやり方もあるな」
文春の取材に対して巨人軍は、原監督にはKやHが暴力団員であるという認識がなかったことを前提にしている。そのうえで支払いをしてしまった当時の心情について、プロ野球界に縁のあるKであれば「助けてもらえるのではないか」という解釈をしたというのだが‥‥。