視聴率低迷が続くフジテレビ。15年度の決算では局単体の営業利益が約55億円と前年の半分近くに落ち込んだ。さらに長らく代表取締役会長を務める日枝久会長(78)に、経費の私的流用疑惑が浮上して‥‥。
「会社のトップがこのままでは、フジの現在も未来も真っ暗なままです」
そう語るのは「フジサンケイ帝国の内乱」(社会評論社)の著者であり、「物言う株主」として知られる松沢弘氏。かつてフジサンケイグループ内の新聞社に勤務していた経験をもとに、その親会社であるフジテレビに対して「反リストラ」や「公正な株主総会」を訴え続けてきた。今回、松沢氏が実名で糾すのは、日枝会長のズサンな経理処理問題だ。
〈最近のフジテレビの報道は日枝の指揮により、あまりにも醜態をさらしている。以下の事実をぜひとも、総会の場で世間に知らしめていただきたい〉(告発文書より、以下同)
こんな書き出しで始まる内部告発文書が松沢氏に寄せられたのだ。その文書によれば、一昨年にフジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(以下、フジHD)の定時株主総会が開かれた6月27日の前日、社内の「スタッフ作業部屋」において、「日枝会長の側近」がこんな話をしていたという。
「会長はさあ、エッチな有料放送が大好きでさ。特に海外に行くとさ、洋物が大好きだからさ、毎日見るわけよ。それでさ、チェックアウトの時に、俺がカードで立て替えて会社に請求しなきゃいけないからさ、フロントの人にさ、俺が見たと思われて恥ずかしいわけよ。あっちではさ、何見たかわかっちゃうからさ」
この証言が事実なら、日枝会長が海外出張中の私的な“洋ピン鑑賞”の費用を経費でオトしていたことになる。
〈フジテレビは、舛添都知事の公私混同を執拗に過剰報道して辞任に追い込んだ。日枝も同じだ。舛添は都民の税金を私的に使い込み、日枝は洋物のポルノビデオを出張のたびに毎日、会社の、つまりは株主のお金を使って見ている。これは適正と言えるのか。メディアのトップとして舛添を非難できるのか。本人が答えるべきだ〉
この文書で問題になるのは、その利用料をジリ貧状態にある会社の金で賄っていたことだ。
去る6月28日、お台場のフジ本社に接するホテルでフジHDの第75回定時株主総会が開かれた。
「告発には実名がありますが、それは伏せておきます」
松沢氏はこう前置きしたうえで、この「経費の私的流用問題」を日枝会長にぶつけた。すると、株主総会の議長でもある日枝会長はこう叫んだ。
「名誉毀損になりますよ!」
松沢氏はその後も2回にわたって疑惑の認否を求めた。日枝会長は内部告発の内容について、最後まで否定しなかったという。
そもそもこの株主総会の公平性にも疑問符が付く。
「昨年と一昨年の総会では、質問者の中に、フジの社員株主が多く含まれていた。彼らは会社にとって都合のいい答弁を引き出すヤラセ質問をしていたことになる」(フジ関係者)
松沢氏は、同じく少数株主である山口三尊氏と共同で、14年と15年の株主総会の決議の取り消しを求めて、フジHDを訴えている。
「裁判ではフジHD側が、質問者の中に社員がいたことはおろか、リハーサルを行っていたことまで認めた」(前出・フジ関係者)
このような“茶番”で会長の座に就く日枝会長について、松沢氏はこう語る。
「日枝さんは取締役に就任してから33年、代表取締役社長(のちに会長)になってから28年もトップの座にあります。これは、92年に創業家へのクーデターで権力を奪ったので、自分が同じような仕打ちにあうことを恐れて、後継者候補を次々と追い出してきたからです。このままでは亡くなるまで、トップに居座り続けることでしょう」
「ポルノ利用」疑惑を追及されてもまともに答弁できない日枝会長は、一流大手メディアのトップにふさわしいと言えるのだろうか。