「スポーツの秋」がやってきました。ある調査によると、日本では成人の2人に1人が「週1回以上」の運動をしているそうです。種目ではダントツのトップがウォーキングで、以下筋肉トレーニング、サイクリング、ジョギング、ゴルフ、ヨガ、体操、ジョギングマシーン、登山と続きます。
ふだんの生活でたまったストレスを解消してくれるうえ、ダイエットにもなるなど、運動にはさまざまな効果があります。
未経験ながら運動不足解消のため48歳で草野球を始めたライター氏によれば、「最初の頃はエラーと三振ばかりだったのが、練習と試合を重ねるうちにゴロをさばき、ヒットも打てるようになった」そうです。単なる運動だけでなく、達成感も味わえるのがスポーツの醍醐味ではないでしょうか。「習うより慣れろ」とはまさにこのことでしょう。
それはさておき、今週のお題にいきます。
老化防止のために運動をする人も多いでしょうが、腕立て伏せとスクワットのどちらが老化防止により適しているでしょうか?
腕立て伏せは上半身、スクワットは下半身が鍛えられます。老化とは、動作能力の低下と言いかえることもできますが、上半身の筋力が低下してもさほど老化には影響しません。
対して下半身の筋力が衰えれば、影響は甚大です。中でも老化=歩行力の低下と言っても過言ではありません。
歩けなくなると、外に出ない⇒鬱的な状態になる⇒認知症を発症する‥‥と老化は一気に加速します。
さらには、下半身の筋力が衰えると足を動かさなくなるため、血栓を起こしたり脳梗塞を招いたりします。当然ながら運動不足で肥満になるなど、悪いことだらけです。
下半身の老化には兆候があります。靴が脱げやすくなる、つまずきやすくなるといった症状には要注意です。
正解は、下半身の筋力を落とさないことが何よりの老化防止。「腕立て伏せよりもスクワット、上半身よりも下半身」です。
ただし、まだバリバリのビジネスマンは見た目を考えると、上半身も大切です。首の下から胸までの筋力が落ちると、人は一気に年寄りっぽく見えます。上半身の筋肉がひときわ輝いていても、年を取ると筋力が落ち、スーツにパッドを入れたりするでしょう。全盛期を過ぎたジャイアント馬場さんをイメージするとわかりやすいですが、見た目の若さを保つ場合、上半身の運動も重要です。
同様に、太腿の裏側の筋肉も加齢とともに落ちてきます。階段を降りる時に大事な筋力であるため、スクワットやソンキョ、四股踏み体操などで鍛えられます。
一度やってみてほしいのが、腰を落とした姿勢でゆっくりと前に進む太極拳の動きです。片足を動かす間、片足で全体重を支えなければならず、かなりきつい動きとなりますが、下半身の筋力を強くするのに適した運動です。
上半身と下半身の両方を鍛えられる運動を「一石二鳥」と考えるなら、水泳は効果的な運動でしょう。上半身を使って前に進み、下半身で推進力を上げていきます。水の中を歩くだけでも運動になるため、老化防止に適しています。
ともあれ、運動を始めたいが何からするべきか、という人は、ラジオ体操から初めてみるといいでしょう。私は時々、ラジオ体操をゆっくりと行う「スローラジオ体操」を試しています。通常のラジオ体操の5倍ぐらいの時間をかけ、腕をゆっくりと上げると、かなりきつい動きとなり、いい汗をかけます。
皆さん、ぜひ試してみてください。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。