社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「注目されるロコモシンドロームって何だ?高齢者の転倒は寝たきりや要介護を招く」

20161208v

「ロコモティブシンドローム」(通称ロコモ=運動器症候群)という言葉をご存じでしょうか。

 これは2007年に日本整形外科学会が、やがて来る超高齢化社会を見据えて提唱した概念で、筋肉や肩、関節、椎間板などの運動器の衰えが原因で、立ったり歩いたりという機能が低下する状態を言います。

 高齢になると転倒しやすく、転倒による骨折で動けない間、筋力の低下により体力が落ち込むことがあります。すると、歩行などの日常生活に障害を来し、ロコモとなります。進行すると要介護や寝たきりになるリスクが高まるわけです。

 このロコモを予防するために、中高年がやっていいトレーニングとは「腹筋運動」と「スクワット」のどちらでしょうか。

 あおむけの状態から上体を起こす腹筋運動は、実は危険です。その昔、運動部ではうさぎ跳びと腹筋がワンセットになっており、ある程度の年齢でもやろうと思えばできてしまいます。

 しかし、腹筋運動は腰を痛めてしまうので、ロコモ予防には適していません。昔の感覚で腹筋をやろうとすると、よけいに体を痛めるリスクがあります。それでも腹筋をやりたい場合、まずはプロのトレーナーに教わるか、市販の腹筋マシンを使うことです。

 一方、足腰を鍛えるスクワットは脚から臀部、背中まで幅広い筋肉を鍛えられる運動で、ロコモ予防には効果的です。国民栄誉賞女優の故・森光子さんが晩年まで朝晩150回も行っており、黒柳徹子さんも、ジャイアント馬場さんの教えを受け、日課として毎晩寝る前に10年以上も続けていたそうです。80歳を超えてもお元気なのは、スクワット効果かもしれません。

 スクワットで使う筋肉は、大腿四頭筋、大臀筋、背筋、腹筋であり、下半身強化やヒップアップ、生活習慣病予防など幅広い効果があります。

 ただし、やり方を間違えると効果は半減します。プロレスラーのように、最初から深く腰を落とすのは難しいので、まずは「膝がつま先より前に出ない」「背中を丸めない」、この2点に注意しながら、できる範囲で始めてください。腰を落とした時に体がふらつくようであれば、まずは椅子の背もたれなどにつかまって始めること。また、正しい姿勢かどうか、鏡を見ながら行うのも一考です。

 このほか、ラジオ体操も筋肉など体の機能を維持するために有益です。全身運動であるラジオ体操は、日常生活で使用しない筋肉や関節を動かし、柔軟性を向上させます。特に高齢になると、筋力が落ちるだけでなく、関節の柔軟性が失われて血流が悪くなり、すると体が凝りやすくなります。ロコモ予防のほか、快適な生活を維持するためにも「いい運動」と言えます。ジャンプ運動などもあるので、高齢になっていきなり始めるより、40代や50代から日課にしておくとベストです。

 逆に、あまりオススメできないのが、歩きながら腰をひねったり足を高く上げる「エクササイズウオーク」です。これは、運動習慣がない人がいきなり始めるにはハードルが高すぎる運動です。まずは普通のウオーキングからスタートし、体が慣れてきたら3分間ずつ早歩きとゆっくり歩行を繰り返す「インターバル速歩」に挑戦してください。このインターバル速歩でもの足りなく感じたら、エクササイズウオークにチャレンジする段階です。

 若かった頃のイメージで、いきなりハードルの高い運動をこなすのはかえって危険。階段を一歩ずつ上がるように、運動も無理せず段階を踏んでください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

カテゴリー: 社会   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
巨人・坂本勇人「2億4000万円申告漏れ」発覚で「もう代役・中山礼都の成長に期待するしかない」
3
フジテレビ第三者委員会の「ヒアリングを拒否」した「中居正広と懇意のタレントU氏」の素性
4
巨人「甲斐拓也にあって大城卓三にないもの」高木豊がズバリ指摘した「投手へのリアクション」
5
3連覇どころかまさかのJ2転落が!ヴィッセル神戸の「目玉補強失敗」悲しい舞台裏