芸能

元日テレ・敏腕プロデューサーが明かす「3年連続視聴率3冠の秘密」(8)無難で似た番組が増えたが…

20161110m4th

「24時間」を通じて、日本テレビを引っ張るディレクターたちに強い仲間意識が植え付けられる。助け合いながらチャレンジする──制作サイドも、まるで「24時間」の精神を体現するがごときなのだ(笑)。

 翌年に、前年総合演出だった人間が「演出担当」の一人として、新しい総合演出の下で携わることもよくある。私も04年の翌年は1回お休みさせてもらったが、06年には「世界一受けたい授業」を担当する後輩の総合演出を、「演出」としてサポートさせてもらった。

 この「24時間テレビ」を通じて展開されるディレクター陣の濃密な共同作業によって、まずは日本テレビの視聴率を取るノウハウが共有される。それと同時に強い「一体感」が生まれるのだ。これはディレクターだけではない。「24時間」制作を通じて、タレント事務所と向き合うプロデューサーたちも同様に、総合プロデューサーの下で同じように経験を積んでいくのだ。

 私は独立して以来、各局で仕事をしているが、この「一体感」は日本テレビが圧倒的であると感じている。他局では「抜け駆け」して「出し抜いて」「一発当てて」スタープロデューサーになりたいという風潮を感じることがある。日テレの人間にも当然そういう部分はあるし、テレビマンたる者あって当然なのだが、何かの折には「一致団結」するところが「日テレ」の特長だ。

 V9時代の巨人、あるいは広岡・森監督時代の西武のようにスターであってもチームバッティング、時には送りバントも辞さない──そんな天衣無縫とも呼ぶべきチーム力こそが、日テレの強さの源泉と言えよう。

 ただ、V9末期や、森監督時代の西武は「強いけどつまらない野球」とも言われた。現在、他局につけいる隙を与えない日テレであるが、「間違いなく視聴率を取れるやり方」で番組を作る一方で、冒険心に富んだ企画は実現しづらい一面もある。視聴率を確実に取りにいくがゆえに、無難だけど似たような感じの番組が増えているのが気がかりだ。

 若いディレクターたちが「自分も早く番組を当てなければ埋没する」と焦燥感を募らせているのも事実である。

 日テレは03年「視聴率買収事件」を起こした。また12年には「芸能★BANG+」が、オセロの中島知子(45)を「洗脳した占い師が出演する」と予告しながら出演せず、打ち切りとなった苦い過去がある。「当てなきゃマズイ焦燥感」は、会社を揺るがす不祥事を引き起こす下地となる。「ブレない」「楽しんで作る」など、日テレの「イズム」を常に頭の片隅に置いてほしいと、OBの一人として願うばかりだ。

 勝ち続けることは難しいのだが、今の日テレなら少なくとも向こう2~3年は安泰だろう。思わぬ不祥事に足をすくわれるようなことがなければ。

村上和彦:(株)プラチナクリエイツ代表。65年生まれ、神奈川県小田原市出身。元日本テレビ放送網制作局専門部長兼演出家・テレビプロデューサー。「ヒルナンデス!」を立ち上げ、「『笑っていいとも!』を終了させた男」として知られる。「スッキリ!!」の視聴率アップや、「24時間テレビ」ほかを総合演出。14年に日本テレビを退職し、フリーランスに転向。現在もテレビ東京「モーニングチャージ」監修ほか番組制作を行っている。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
暴投王・藤浪晋太郎「もうメジャーも日本も難しい」窮地で「バウアーのようにメキシコへ行け」
3
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
4
侍ジャパン「プレミア12」で際立った広島・坂倉将吾とロッテ・佐藤都志也「決定的な捕手力の差」
5
怒り爆発の高木豊「愚の骨頂!クライマックスなんかもうやめろ!」高田繁に猛反論