高齢者に支えられる「笑点」だが、ほかならぬ出演者自身にも高齢化の波が押し寄せてきている。
かつて私が「24時間テレビ」を担当した際、
「日曜の夕方に放送して高視聴率を稼げる『笑点コーナー』を長めにできないか」
と担当者に打診したことがあった。その時の返答は、
「出演者にも、収録参加者にも、高齢者が多いため、生放送での大喜利は20分以上はできない」
というものだった(笑)。そんな「笑点」は、今年5月29日の放送から、司会が桂歌丸(80)から春風亭昇太(56)に替わった。新メンバーに林家三平(45)も加わって、平均年齢約66歳から約62歳へと若干の若返りとなったわけである。これは、
「この先20年は番組を続けるぞ」という、日テレの決意表明だろう。
ただし20年後、新たに高齢者となる今の50代は、すでにスマホ・ネット世代である。その時「笑点」を観るかはわからないのだが、平均寿命が伸び続けているのだから、その時点でも80代90代はお元気だろう。引き続き「笑点」は、それなりの視聴率を取っていることが予想される。
18時に「笑点」がキャッチした高齢者を、そのまま引っ張るのがニュース番組の「真相報道 バンキシャ!」である。ここで主婦層などやや若い視聴者も巻き込んだ状態で、19時の「THE鉄腕DASH」を迎えるのだ。
「鉄腕DASH」は、番組スタート時は23時台の遅い開始時間であった。当初のウリ文句は、
「この番組はTOKIOのメンバーをアイドル扱いせず、さまざまなことに体を張ったチャレンジをさせます」
といったものだった。「江ノ電が一駅走行するのにメンバーがリレーで併走して勝てるのか?」など、当時のジャニーズ出演番組としては大胆な企画を実行していた。
そして19時台に移ったあと、番組は「DASH村」というロングヒット企画をものにするのだ。これは単発でのチャレンジ企画ではなく、「村づくり」というロングスパンの番組自体の「チャレンジ」であった。「農業するアイドル」というのも画期的だったが、やがてメンバーが道具作りから「農業」などに本格的に取り組む姿が、ジャニーズファンという枠を超えて、ファミリー層から高齢者層の心も捉えたのである。ちなみに当時「DASH村」には、メンバーが不在の時も住み込みで田畑を守りながら、四季の移ろいを撮影していたスタッフがいたことを参考までに記しておこう。
村上和彦:(株)プラチナクリエイツ代表。65年生まれ、神奈川県小田原市出身。元日本テレビ放送網制作局専門部長兼演出家・テレビプロデューサー。「ヒルナンデス!」を立ち上げ、「『笑っていいとも!』を終了させた男」として知られる。「スッキリ!!」の視聴率アップや、「24時間テレビ」ほかを総合演出。14年に日本テレビを退職し、フリーランスに転向。現在もテレビ東京「モーニングチャージ」監修ほか番組制作を行っている。