ここで、あらためて考えてみる──日本テレビはなぜ強いのか? 私は、その理由の一つを「24時間テレビ」にあると考える。「24時間テレビ」は78年から始まり8月下旬に放送されるが、毎年賛否両論が巻き起こる。今年は裏番組で放映された「バリバラ」(NHKEテレ)が、ある言葉で批判することとなった。
だが、この大型番組の存在が、日本テレビの番組制作力を高めていることは間違いない。
実は「24時間テレビ」制作の中心となる、「総合演出」は毎回変わっている。ある年は「世界の果てまでイッテQ!」の担当者が、その翌年は「行列のできる法律相談所」の担当者といった感じだ。
もちろん「24時間」の総合演出は、誰にでもできるものではない。レギュラー番組で高視聴率を獲得して、実力を認められた者だけが総合演出に指名されるのだ。
例年8月の放送を終えてからほどない時期に、経営幹部から翌年の担当者が任命される。私は04年の「24時間」で総合演出を担当したのだが、当時の萩原社長から、
「来年はアナタが担当です」
と伝えられたのは、03年の9月だったと記憶している。来年17年の担当者も、現時点で、すでに決まっているということである。
「24時間」では総合演出の下に、「演出」という肩書で5名ほどのディレクターが集められて、番組の中核スタッフとなる。しかも下につく「演出担当」も、ふだんはゴールデンタイムや帯番組などでは、みずからが総合演出として番組を引っ張る精鋭ぞろいだ。
日頃はお互い競い合うライバルでもあるのだが、「24時間」に関しては、その年の総合演出をもり立てて、番組の成功に向けて一致団結する。演出の人間はそれぞれ「中継でのチャレンジ」「マラソン」「武道館での企画」「メインパーソナリティの企画」「ネット局企画」などを分担する。総合演出が意図する方向性を意識しながら、責任を持ってコーナーを作り上げていくのである。
任命後、年明けくらいまでにはメンバーが招集されて、コアメンバーによる会議が始まる。それから8月末の本番まで半年以上、メンバーは通常の番組や特番を作りながら「24時間」を作るのだ。
精鋭ゆえに、それぞれが独自の「作風」や「演出論」を持っているが、「24時間」では総合演出のやりたい演出を尊重する。その制作過程で、自分とは違う「演出」に触れることができるのだ。
私自身、総合演出になるまでに99年から4回「演出」を担当した。毎回、当時のヒット番組「とんねるずの生ダラ」「伊東家の食卓」「ズームイン」「笑ってコラえて!」などを手がけていた、総合演出の諸先輩から多くのことを学ばせていただいたものだ。迎える8月の本番では、演出陣はそれぞれ武道館や日テレ本社のサブコン(副調整室)に陣取り、深夜に軽く仮眠を取る以外ほぼぶっ通しで生放送に挑むのである。
村上和彦:(株)プラチナクリエイツ代表。65年生まれ、神奈川県小田原市出身。元日本テレビ放送網制作局専門部長兼演出家・テレビプロデューサー。「ヒルナンデス!」を立ち上げ、「『笑っていいとも!』を終了させた男」として知られる。「スッキリ!!」の視聴率アップや、「24時間テレビ」ほかを総合演出。14年に日本テレビを退職し、フリーランスに転向。現在もテレビ東京「モーニングチャージ」監修ほか番組制作を行っている。