テリー 関西で人気絶頂になったあと、東京に進出されてからはいかがでしたか?
大村 いろいろありましたね。当時、とある東京の大物芸人さんとふとしたキッカケで険悪なムードになりましてね。その取り巻き連中が何かと僕に対して嫌がらせをしてきたんですよ。
テリー えー、どんなことがあったんですか?
大村 いろいろ変な電話がかかってきたり、夜歩いていたら、向こうからドーンとぶち当たってきて「明るい町ばっかりじゃねえぞ、この野郎」とか捨てゼリフを言って消えていったり。
テリー 知らない街でそんなことされると、怖いですよね。
大村 でも、その時分にちょうど谷幹一、関敬六、渥美清と仲よくなってね。この3人がガードしてくれたんです。バッと僕を囲んで、毎日御飯に連れて行ってくれたりね。
テリー へぇ~、渥美清さんってどういう方だったんですか?
大村 優しい人ですね。よく谷幹一の家に集まっていたんだけど、渥美さんはいつも僕のためにロールケーキを買ってきてくれるんですよ。で、みんなの分もきれいに取り分けてくれる。
テリー 繊細な感じですね、寅さんのイメージとはまるで違いますね。
大村 うん。で、僕らは谷さんの家に泊まっていくんだけど、渥美さんは「俺、帰る」って急に帰っちゃうんです。でも、帰りしなに「崑ちゃん、ゆっくりね。無理しちゃダメだよ、肺が片一方ないんだから。この業界、無理言ってくるけど、無理はぜったいダメだよ、寝るんだよ」とか言ってくれるんです。
テリー 確か、渥美さんも片肺だったんですよね。
大村 だからこそのアドバイスだよね。ありがたかったです。
テリー 本には、高倉健さんとの思い出も書かれていますよね。
大村 そう。当時、江利チエミさんが、北野劇場で年2回ぐらいショーをやっていたんだけど、時間が空くと必ず僕を外出に誘うんです。だから、僕はてっきりチエミちゃんに好かれていると思ってた(笑)。
テリー そんなムードだと勘違いしちゃいますね。
大村 ある時、チエミちゃんの楽屋に行ったら、彼女がいい男と一緒にメロンを半分に切って、カレーのスプーンで食べてたんです。で、チエミちゃんが、「あ、崑ちゃん、紹介しとく。東映の高倉健さん」と紹介してくれた。健さんも正座して「高倉健です」って。
テリー すでに“高倉健”してますね(笑)。
大村 その時、僕は高倉健を知らなかったんですよ。忙しくて東映の映画を観られなかったから。年齢を聞いたら同い年でね、チエミちゃんがショーに出てる時とか、よくしゃべりましたよ。けっこうおもしろい話をしてくれましたよ。でも結局、僕は高倉健にチエミちゃんをとられちゃうんです。
テリー いやいや、最初からとられています(笑)。
大村 その時の悔しさがあるんだね、だから僕はいまだに家では、メロンは半分に割って大きなスプーンで食べてるんです(笑)。高倉健には負けないぞ、という気持ちでね。
テリー アハハハ! 美空ひばりさんとのエピソードとか、他にも聞きたい話がいっぱいあったんですけど、もう時間がなくなっちゃいました。
大村 フフフ、気になる人は、本にいっぱい書いてあるからね(笑)。
テリー あちゃ、さすがは宣伝上手! 生CMありがとうございます!
◆テリーからひと言
別れ際にいただいた「喜劇は砂糖みたいなもの。うまく使えば“料理(ドラマ)”がおいしくなる」という言葉、胸に染みました。いつまでもドラマで、いい味付けをお願いします!