だが、2人の馬に差がついたことには理由もある。
一つはドゥラメンテ、リオンディーズといった、デムーロ騎乗の有力馬の相次ぐ故障と引退だ。故障は走る馬ほど起こりやすいため必ずしも騎手のせいとは言えないが、何度も続くと調教師や馬主に不信感を抱かれる原因となる。ましてデムーロは制裁点トップが示すように、騎乗ぶりが荒い。危険がそれだけ多いのだ。
スタートが決まらず出遅れが多いことに不満が高まっているのも確かで、
「連対時脚質を見ればわかるように、逃げるのが不得意。今年は逃げての連対が14回だけです。これは勝利数トップテンにいる騎手では、内田博幸(46)の8回に次いで下から2番目。あるいはハタから見ると、同じ負けでもまったく何もやらずに負けていることがあるのがデムーロ。いろいろ講じたフリはするから、力を出し切って負けている感があるのがルメールです」(競馬サークル関係者)
ただ、ここ一番でデムーロの勝負強さを買う声も依然多い。それは重賞勝ち鞍を見れば明らかだ。JRA騎手になって以降、デムーロが勝利した重賞は24(うちGIは5勝)。対してルメールは18で、GIは3勝だ(いずれも11月13日現在)。
さて、このエージェント変更で、人間関係に変化は現れたのか。トレセン関係者が明かす。
「確かに一切、口をきかなくなる騎手とエージェントはいます。そりゃ、切られたほうはよく思わないですよ。(T氏は)走らない馬をあてがっていたわけでもないですし。デムーロとルメール自身はもともと仲が悪いわけではないので、今までと変わらない感じで接してますよ。ケンカ別れではないですからね」
エージェント変更には(I氏が担当する)川田の了承も必要だが、
「当然、川田はいい気分はしません。自分だけに手配をしてほしいわけですからね。まぁ、いちばん喜んでいるのは(ルメールと同じT氏をエージェントにしている)浜中俊(27)ですよ(笑)。デムーロが抜けて、自分にいい馬が回ってくるんじゃないかと」(前出・トレセン関係者)
そしてデムーロが新コンビを組むI氏については、こんな評価が。
「過去に安藤勝己を担当し、大きな成功をもたらした辣腕エージェント。恐らく今後は、川田が乗っているサトノアーサー(牡2)、リナーテ(牝2)、タイセイスターリー(牡2)などのうち、どれかをデムーロに回すのではないでしょうか。川田で結果を出せないようならデムーロでいく、と。それらを預託する池江泰寿、須貝尚介、矢作芳人の各調教師とは昔から強いつながりもありますしね。腕の見せどころです」(スポーツ紙競馬担当記者)
これまで以上に「デムーロvsルメール」の激しい叩き合いが繰り広げられることだろう。