11月13日のエリザベス女王杯。今年4回目のGI制覇を果たしたミルコ・デムーロ(37)の喜びようときたら、これまでになかったほどだったという。10月20日にエージェント(騎乗依頼仲介者)変更がJRAから発表されてから、初のGI勝利だったのだ。
スポーツ紙競馬担当記者が言う。
「実はレース2週前までは桜花賞馬ジュエラーに乗るはずでしたが、出走回避で騎乗馬がなくなった。結局、新エージェントら関係者の尽力でクイーンズリングに乗ることができた。この馬はクリストフ・ルメール(37)の騎乗で決まっていましたが、彼をシングウィズジョイに回したのです。そういうこともあって、喜びもひとしおでしたね」
クイーンズリングはもともとデムーロのお手馬で、シングウィズジョイと同じ社台ファーム生産馬。そうした背景もあり、チェンジ可能だったのだろう。その2頭によるワンツーフィニッシュだった。
エージェント変更が奏功したデムーロの勝利。これまでデムーロとルメールのエージェントは同じ人物、「競馬ニホン」のT氏が担当していた。トレセン関係者が解説する。
「デムーロは夏前から思ったより勝ち星が伸びず、ナーバスになっていた。勝てないのを馬の質のせいにしていました。デムーロの身元引き受け先である社台ファームには『日本の母』のような役割の、ブレーンみたいな女性がいます。当初、彼女はT氏に『2人に変な差が生まれないように(馬の手配を)してほしい』と頼んでいた。ただ、2人には大きな違いがあります。ルメールは膝が悪いため、1日の乗り鞍を制限している。『全レースに乗らなくてもいい』とT氏には言っています。一方のデムーロは、そんな制限を設けていない。だからT氏は未勝利戦の馬なども回していたのですが、それでなかなか勝てないでいると『何でオレのところにはそんな馬が回ってくるのか』と、ブレーン女性に愚痴をこぼしていたというのです。それで女性はエージェント変更を提案した」
つまりは「ルメールにばかりいい馬が集まる」と不満をブチまけていたというのである。
デムーロがスプリンターズS(10月2日)をレッドファルクスで勝った翌日、T氏は突然、社台に呼び出され、変更を通告されたという。
確かに両外国人騎手の馬を見ると、ルメールには、牡馬では東京スポーツ杯2歳Sに出走したムーヴザワールド、ダートで無敵のエピカリス。牝馬では怪物フランケルの仔ソウルスターリング、ラキシスの全妹フローレスマジック、女傑ブエナビスタの初仔コロナシオンと、GIでの活躍が約束されている素質馬ぞろい。
一方、デムーロの主な2歳馬は、ダリア賞に勝ったリンクスゼロとオークス馬エリンコートの初仔エリンソードぐらい(共に牡馬)。
結果、デムーロの新エージェントは、川田将雅(31)を担当する「競馬ブック」のI氏になった。