菜七子フィーバーに沸く競馬界がGIシーズンに突入してさらに盛り上がる中、なぜか日本人騎手の浮かない顔が目立つ。それもそのはず。2人の外国人旋風が吹き荒れ、勝ち鞍を独占状態。モンゴル勢に勝ち星をさらわれている大相撲界のごとく、悲痛な声が聞こえてくるのである。
桜舞う阪神競馬場でGI・桜花賞が行われた4月10日、藤田菜七子(18)が、裏開催の福島競馬場でJRA初勝利を上げた。初騎乗から51戦目での勝利はファンの大歓声に包まれたが、このローカルの地には、意外な騎手も参戦していた。スポーツ紙デスクが言う。
「昨年の桜花賞をレッツゴードンキで制し、GI24勝を誇る豪腕・岩田康誠(42)です。桜花賞当日にローカル参戦とはビックリ。この日は田中勝春(45)も福島3RでJRA通算1700勝を飾ったり、前日の落馬負傷がなければ横山典弘(48)も騎乗予定と、例年では考えられない豪華なメンツがそろっていました。カッチーとノリさんは東(美浦トレセン所属)で、年齢的にもしかたないとしても、まさか西(栗東トレセン)の岩田が乗りに来るとは。そのうえ、GI・皐月賞も乗り馬がないなんて、以前なら考えられない事態です」
岩田の絶不調ぶりは週刊アサヒ芸能2月18日号で報じ、調教拠点を西から東に移す可能性についても触れたが、それが現実のものとなった。スポーツ紙デスクが続ける。
「岩田は主戦を務めるヌーヴォレコルト(美浦・斎藤誠厩舎)の調教に騎乗するため、その期間内はレースも関東圏を中心にすると説明していた。ただ、『もう一度、ゼロからやろうと。(地方の)園田時代の気持ちを忘れてしまってるので、ストイックに自分をいじめていかないとNO1にはなれない』とも語っていました。社台グループの主戦の座を(栗東トレセン所属の)M・デムーロ(37)とC・ルメール(36)に奪われたことで、2人との対戦を避けて東に逃げてきた感じです」
ばかりかその美浦から福島へと「追いやられた」形なのである。
昨年12月のヌーヴォレコルトの香港遠征でR・ムーア(32)に乗り替わられた岩田にとって、昨年3月からJRA所属となったデムーロとルメールの快進撃は大いなる脅威。スポーツ紙レース部記者によれば、
「昨年の岩田は101勝で、東西リーディング6位。デムーロは実質10カ月で118勝(3位)、ルメールは9カ月で112勝(4位)でしたが、今年はすでにデムーロが58勝でトップ。続くルメールが54勝(ともに4月10日現在)と、ハイペースで勝ち鞍を量産中。全盛期の武豊(47)が2人いるような状況です」
トレセン関係者もこう言ってため息をつくのだ。
「(05年に武が212勝した)記録を更新するかどうかはともかく、2人で400勝というのが現実的になっている。そりゃ、不調の岩田も逃げたくなるだろうし、他の日本人騎手から悲鳴も上がりますよ。あるベテラン騎手は『大相撲界みたいだな。向こうは(モンゴル出身の横綱が)3人だから、まだマシか』と苦笑していました」