正式就任前から世界に多くのショックを巻き起こす、ドナルド・トランプ次期アメリカ大統領(70)。しかし、日本のヤクザたちは「勝利宣言」を前に、対策に奔走していた。地下経済集団の恐るべき実行力とは──。
トランプ氏が、就任初日にTPP離脱を通告することを明らかにしたのは、11月21日のことだった。世界崩壊の始まりか、新たな時代の幕開けか──先行きが不透明な中で、いち早く急反応した経済集団がある。それこそがヤクザだ。あるフロントの一人が明かす。
「中国や香港、シンガポールなどの銀行に蓄えられたヤクザマネーは、トランプ勝利が確定する直前から、急激にアメリカに戻ろうとしている」
その理由をわかりやすく言えば、TPP離脱を含めたトランプ氏の経済政策に鍵がある。トランプ氏は、
「高速道路や橋、トンネル、空港、学校、病院などのインフラを整備することは最重要課題だ。そのために何百万人という労働力を投入する」
と勝利宣言で明言している。前出・フロントが解説する。
「要するにアメリカは内需を拡大して、トップに返り咲くということで、労働者、工場、金という『ヒト・モノ・カネ』をアメリカに戻す。見据える敵は中国だ」
開戦するアメリカと中国の経済戦争で、どちらが勝つのかわからない。多くの投資家が足踏みする中で、ヤクザは早くも中国などにプール、運用していた金をドルに換えて資本移動している。なぜドルなのか── 12月中旬に経済評論家・渡邉哲也氏との共著「山口組分裂と国際金融」を上梓する、元神戸山口組系組長・猫組長氏が解説する。
「バブル期末期くらいから、金融ヤクザは『ドルのウマミ』を覚えました。日本国内で暴力団の規制が強まり、使うことができなかったヤクザマネーは、ドルに換えられ海外へと向かったのです。世界で最も流通量が多く、信頼性の高いのがドル。そのドルを発行するアメリカが中国に負けることは考えにくい。不透明な今こそドルなのです」
多くの民間企業が急速な資本移動を足踏みする中、ヤクザマネーだけが急反応できる理由を、前出・猫組長氏が明かす。
「地下経済の人間は高速道を作ることにたけているということです。一般の人が使うルートは、合法であるがゆえに時間がかかる。ところが暴力団は非合法をいとわず『暴力』を装置として持っている。そうした要素によって作られたルートは一般のそれと比べて格段に速く対応できるのです」
しかし、出どころのわからない大量の現金が猛移動すれば、国際機関からチェックされ、没収となる仕組みもある。ヤクザマネーはそれをどう切り抜けているのか──。前出・フロント氏によると、中国を出ていったお金は続々とイギリスに集まり、次のビジネスチャンスを見越してアメリカ上陸の機会をうかがっているという。
「こういう場合によく使われる手口は、現金の証券化。現地で現金をSKR(金保管証券)や石油取引決済用LCなどに換えるのです。国債はユーロクリアに振り替えて、米国内の証券口座へ入庫後に現金化します」(前出・猫組長氏)
それにしても、莫大な量の「暴力資本」を移動させるだけでも、やはり莫大なお金が必要となる。
「ヤクザというのは、タニマチの『ダンベ』も含めて、基本的に現金主義。24時間何があっても困らないように、現金を保持しています。今買えば確実に儲かる土地があっても、民間企業では稟議書と銀行審査を待たなければなりません。しかし、ヤクザは電話一本で5分後には用意できる。ルートと集金力両面の速度こそが、ヤクザマネーの命なのです」(前出・猫組長氏)
11月23日には、菅義偉官房長官(67)は、「日本が先頭に立って(トランプ氏のTPP参加を)説得していきたい」と明言。現政権より、ヤクザの決断力と実行力は高いようである。