この専門医が続ける。
「それから、CT検査には放射線被曝の問題もあります。最近のCT検査は造影剤を体に入れる前と入れた後の2回ワンセットで行われることが多い。この方法で胸部と腹部のCT検査を受けた場合、患者の被曝線量は1回の検査で60ミリシーベルト、年2回なら120ミリシーベルトにも達する。つまり、原発作業員が1年間に浴びることのできる限界線量の100ミリシーベルトを超えてしまうんです」
しかも、あまり意味のない術後サーベイランスで再発が見つかってしまうと、その瞬間から過酷な抗ガン剤治療、この専門医の言葉を借りれば「治る見込みどころか延命効果すらない、患者が死ぬまで続けられる無意味な治療」に引きずり込まれてしまうのだ。この蟻地獄に足を踏み入れないためにも、患者の意思で術後サーベイランスの受診回数を減らす工夫も一つの手だ。ちなみに私は、最初の1年間は検査を3分の1に減らしてもらった。
一方、効果の問題はさておき、代替療法として漢方薬やサプリメントなどを服用する患者も少なくない。だが多くの場合、患者が希望しても、ガン専門医が漢方薬やサプリメントを処方することはない。そのため、患者はみずから薬局に出向き、薬剤師に相談しながら、完全自費で手に入れなければならない。
ところがこの漢方薬などにも、保険適用の道があるのだ。漢方薬の処方やサプリメント提供などの代替療法を積極的に行っている開業医が解説する。
「医師がガン患者に漢方薬を処方してはいけないという決まりはありません。医師と患者がその気になればできるのです。事実、私も保険適用の形で患者さんに漢方薬を処方しています。薬ではないサプリメントを保険適用で提供するのはさすがにムリですが、患者さんが希望される場合は、私が安全かつ安価だと判断したサプリに限って紹介、提供しています。もっとも、医師の中には詐欺師みたいなボッタクリもいるので、代替療法を受ける際はくれぐれも注意が必要です」
ちなみに、この開業医が処方している薬とその値段(いずれも3割負担)の一例を示すと、大腸ガンなどの再発予防効果が指摘されている乳酸菌シロタ株錠剤(1日あたりの費用は約10円)、肺内の免疫を増強するとされるマクロライド剤(1日約24円)、全身の免疫を増強するといわれている十全大補湯や高麗人参などの漢方薬(1日約87円)などがある。
最後に、究極の安上がりについても触れておこう。ズバリ、全ての年金加入者に適用される「障害年金」だ。障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2つがあり、ナント、前者は年間78万円(別に子供手当として年間22万円など)、後者は年間22万円から58万円(障害等級別)が支給されるのだ。
国は請求者が増えるのを恐れてPRに消極的だが、障害年金はガンにもバッチリ適用される。抗ガン剤の副作用で働けなくなった、あるいはフルタイムで働けなくなった場合など、ぜひ請求の申請をしてほしい。
ガンと聞けば患者は怯え、医者の言いなりになってしまいがち。最低限の費用で効果的な治療を受けられるよう、正しい知識を身につけるべきだろう。
森省歩(ジャーナリスト)