日本人の2人に1人が患うと言われる「国民病」ガン。その治療法は日々進歩を遂げると同時に、ありとあらゆるモノが出回っている。そして庶民の頭にインプットされているのは、「ガン治療費は高い」というイメージ。だが、はたしてそうなのか。医者が教えたくない「現実的で安いガン治療」を受けるための知恵と知識を授けよう。
11月20日放送のNHKスペシャル「“ガン治療革命”が始まった」で、今注目のプレシジョン・メディシン(精密医療)が取り上げられた。紹介されていたのはガン細胞の遺伝子を解析して最適な薬剤(抗ガン剤、分子標的薬、免疫抗体薬など)を投与する最新治療。だが、健康保険が適用されない自由診療にあたるため、遺伝子解析のための検査費用だけで40万円から100万円もかかる。
しかも検査で判明した最適な薬が保険適用外だった場合、その薬代も全額自己負担になってしまう。例えば抗ガン剤は、ガンの種類ごとに保険適用される薬が決まっている。つまり、遺伝子解析で最適な抗ガン剤がわかっても、それが保険適用外なら、毎月100万円前後の薬代を別途、負担しなくてはならないのだ。
そもそも、遺伝子解析などはまだ治験段階にあり、海のものとも山のものとも知れないシロモノ。ところが、治療に取り入れる医師もいて、高額な医療費が問題視されているのだ。
そもそも、ガンという病は、治るか治らないか、のどちらかである。治らないガンを治している名医はいないし、治るガンは大枚を要する特別な治療をしなくても治る。また、ガン治療には、ガンそのものではなく、手術の合併症や抗ガン剤の毒性など、過酷な治療で死んでしまうという背理も存在している。
実はかく言う私も、4年半前に大腸ガンの手術を受けたガン患者だ。術後の病理検査の結果、病期は所属リンパ節の2カ所に転移のあるステージ3A(進行S状結腸ガン)と診断され、主治医からは再発予防のための経口抗ガン剤の服用を強く勧められた。だが、カネはかかるし、効果は怪しいし、ということで、恐ろしげな薬の服用を拒否。ガンが治ったのか治っていないのかは、再発を来たして死んでしまうまでわからないが、実はガン治療には「ビンボー人ほど長生きできる」という、庶民にとってはちょっとうれしい逆説も存在しているのだ。
そこで、今回は天下の「Nスぺ」に対抗して、「安上がりガン治療」のための“得”常識を“アサスペ”としてリポートしてみたい。
手始めは、あの菅原文太(享年82)も受けた「陽子線治療」。膀胱ガンが見つかった文太は「立ち小便ができなくなったら菅原文太じゃねぇ」の名ゼリフを吐いて膀胱全摘手術を断固拒否。その後、膀胱を温存できる陽子線治療を筑波大学附属病院で受けた。
その決断やよし、ではあるのだが、問題なのはその費用。陽子線治療は保険が利かないため、実に300万円近いベラボーな負担が発生してしまうのだ。
陽子線治療は重粒子線治療とともに、先進医療に指定されている。重粒子線治療も、300万円を超える自己負担を強いられる高額医療。2つまとめて「粒子線治療」と呼ばれるが、肝心要となる治療効果を考えても、これほどのカネをかける意味は希薄だというのである。
森省歩(ジャーナリスト)