芸能

後世に伝えたい「ニッポンの大ヒット映画」女優!(6)「高橋洋子・悪魔の手毬唄」

20161215i

 原作・横溝正史、監督・市川崑、主演・石坂浩二と並べば、おどろおどろしさが立ちこめてくる。77年の配給収入10位(7億5000万円)を記録した「悪魔の手毬唄」(東宝)に、高橋洋子(63)は重要な役で出演していた。

──70年代の邦画界において、多くの巨匠たちに愛されました。

高橋 そうよ、デビュー作が斉藤耕一監督の「旅の重さ」(72年、松竹)で、さらに熊井啓監督の「サンダカン八番娼館 望郷」(74年、東宝)や、神代辰巳監督の「宵待草」(74年、日活)もあった。

──本作「悪魔の手毬唄」は、前年に公開された角川映画の第1作「犬神家の一族」に続く市川崑監督の金田一シリーズ。鬼首村に古くから伝わる手毬唄に見立て、同い年の娘たちが次々と殺されていきます。

高橋 私の事務所は、永島暎子さんがやった青池里子の役をやらせたがったんです。生まれた時から顔にあざを持ち、最後は自分の母親である青池リカ(岸恵子)に殺されるという悲しい役。ただ、その役だと永島さんのクールな目の感じが合ってたんでしょうね。

──そして決まったのは、リカの息子・歌名雄と恋仲でありながら、滝で水死体となる由良泰子の役。

高橋 市川監督と面接して、そしたら「最初に殺される役がいいかな」と言われたんですよ。あどけない顔だから、そのほうが合っていると。

──映画は、北公次とのキスシーンで幕開け。結構、長い時間でしたよね?

高橋 長かったです(笑)。北さんは当時、フォーリーブスの一員でトップアイドルだったから、キスシーン自体も初めてだったって。撮影の合間にいろいろ話をして、給料で何を買ったか聞いたら「競走馬を」って言ってましたよ。休みになると牧場に会いに行くって言ってる表情がキラキラしてましたね。

──舞台裏もいい雰囲気でありながら最初に殺され、滝つぼにじょうごを口にくわえたまま横になり、升から流れる水を受けながら浮かんでいます。

高橋 実はロングで撮っている時の死体は、私が半日かけて作らされたデスマスクを着けた人形です。そうでないと、冷たい滝の中で凍え死んでしまいます。そしてアップになる場面は、東宝のスタジオに作ったセットなので、これは私です。水温は調整してあったけど、死体なので目を開けたまま、まばたきをしないように必死でした。

──あ、アップとロングで別々の撮影なんですね。さすが市川崑マジック。

高橋 ああいう田舎町で撮っていて、どういう映像になるんだろうと思っていたら、実に鮮やかな仕上がりでしたね。

──犯人のリカは、自分の娘を含む仲よし4人組の父親が、全て自分の夫であったことが許せなかった。そして間違って娘を殺してしまったことにショックを受け、底なし沼に沈んで最期を迎える。

高橋 北さんが演じた歌名雄は、恋人の私も、自分の母親も、水でのお別れで失ったことになりますね。悲しいけれど余韻の残るいい映画だったと思います。

──ラストに駅のホームで金田一耕助(石坂浩二)が、捜査に当たった磯川警部(若山富三郎)に対して「リカさんを愛してらしたんですね?」と聞く。声は汽笛にかき消され、答えない磯川警部に代わり「総社(そうじゃ)」という駅のプレートが肯定の返事となる‥‥。

高橋 若山さんもすごくよかったし、市川監督とも、もっとお仕事したかった。思い出の1本です。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
暴投王・藤浪晋太郎「もうメジャーも日本も難しい」窮地で「バウアーのようにメキシコへ行け」
3
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
4
侍ジャパン「プレミア12」で際立った広島・坂倉将吾とロッテ・佐藤都志也「決定的な捕手力の差」
5
怒り爆発の高木豊「愚の骨頂!クライマックスなんかもうやめろ!」高田繁に猛反論