芸能

天才テリー伊藤対談「嘉門達夫」(3)年齢なりのリアルを歌い続けたい

20161215s

テリー 放浪して、女の子とそんなに楽しく遊んでる人が、どうしてまた芸能界に復帰できたんですか?

嘉門 それは僕をかわいがってくれていた「ヤングタウン」のプロデューサーが、アミューズの大里(洋吉)会長に「おもしろいやつがいますよ」って、僕の歌を聴かせてくれたからですね。

テリー アミューズは、サザンオールスターズや福山雅治さんなどが所属する大手事務所ですね。

嘉門 そうです。たまたまアミューズがちょうど大阪支社を作ろうと、「ヤングタウン」と関係を作っている時期だったんです。で、会長が僕の歌を気に入ってくれて、最初はアルバイトとしてアミューズに入るんです。そのうち、サザンがツアーで関西に来たら打ち上げを盛り上げたり、桑田(佳祐)さんのライブに前座で出たりするようになって、今のような活動を始めるんですね。

テリー 嘉門さんの芸名の名付け親が桑田さんっていうのは、有名ですもんね。

嘉門 ええ。で、83年に「ヤンキーの兄ちゃんのうた」で、その年の有線放送の新人賞とかいただいて、翌年が「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」、25歳の時ですね。そこからずっと続けて、今に至るという。

テリー もうデビューして33年なんでしょう。嘉門さんはどうして、そんなに長く続けられるんですか? というのはね、最近「歌ネタ」「リズムネタ」と呼ばれるお笑いがはやりますけど、みんな1曲で終わっちゃいますから。

嘉門 それも最近よく聞かれるんですけど、作詞作曲して、アレンジして、CDに落とし込むというのは、その楽曲を洗練させて純度を上げていかないと、何度も繰り返して聴いてもらえるものにならないからですよ。もちろん、その場のパフォーマンスも大事なんですけど、やっぱり最終的には、楽曲の完成度だと思います。

テリー 今の若い人には、それが足りませんか?

嘉門 どぶろっくの「もしかしてだけど」なんて、すごく完成度の高い楽曲だと思うんですけど、ああいうのをもっとたくさん作っていかないと。

テリー さっきの「風刺詩人」じゃないけど、新しいものを常に感じる感性が大事ですよね。

嘉門 僕、今年やっと57歳になったんですけど、例えば80歳の気持ちを歌っている80歳のシンガーっていないな、と思うんですよ。その年齢になって、現役で「じゃあ次の曲、聴いてください。『あんたの介護は受けたくないです』」とか、「次の曲は『尿もれ』です」とか(笑)、今後もその年齢なりのリアリティが出せる歌は歌っていきたいですね。

テリー それをやるには、現役を続けていかないといけない。

嘉門 そうなんです。80歳でおもしろい歌を歌うためには、80歳になって急に歌い始めてもおもしろくならない。「先を見据えて、これからやらなきゃいけないな」とは最近よく考えています。

テリー 介護の他、どんなネタがありそうですか?

嘉門 サラリーマン川柳なんかに出てくるような、熟年夫婦の独特の距離感をネタにした替え唄とかも、けっこう作ってますよ。

テリー 嘉門さんにかかったら、この手のネタは無限だろうなァ。大ヒット曲のメロディに異次元の詞が乗っているから、おかしさがさらに倍増しちゃうんだよね。

嘉門 確かに、誰でも知っている大ヒット曲やCMをネタにすることにはけっこう神経を遣っていますね。一見、簡単そうに見えるのかもしれませんけど(笑)。

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