かつて多くの被害者を出して摘発された詐欺グループの残党が、ひそかに活動。さまざまな有名人の名前をかたって、新たな「事件」を起こしていた。会員からカネを集める際にはあろうことか、皇室との深い関係まで持ち出していたというのだから‥‥。
長崎県の玄関口、長崎空港を有する人口9万人の街・長崎県大村市。大村湾を望む小高い丘にある民家に長崎県警の捜査員が「ガサ入れ」に入ったのは10月中旬のことだった。
「玄関前の通りに車が4、5台止まり、段ボールを持った人が出入りしていて。まさか、あれが家宅捜索やったとは」(近所の主婦)
郵便受けに「ポーラースター」と記されたこの民家は、東京・渋谷区に本社を置く同社の九州営業所だった。登記簿によれば、同社は1975年設立。事業目的には〈美術品・骨董品等の売買に係る事業〉などのほか、〈沈没船・水中遺物・水中埋蔵物等の引揚げに係る事業〉と記されている。舞台となったのは、この「沈没船引き揚げ事業」だった。
今年7月までに、ポーラースターから出資金をダマし取られたとして、複数の「被害者」が長崎県警大村署に告訴状を提出。県警と大村署による合同捜査が始まる。冒頭の九州営業所ほか、東京本社や関係各所への一斉家宅捜索が行われたのだ。捜査関係者によれば、
「現在、詐欺と出資法違反容疑の両面から捜査中で、関係各所から押収した証拠品を精査しているところです。年度末までの立件を視野に、捜査を進めています」
まだ犯罪の事実が確定したわけではないにせよ、ガサ入れ、そして具体的な捜査がスタートした、れっきとした「事件」と言える。
告訴状を出した佐賀県の会員女性・Aさん(60代)が、怒りもあらわに語る。
「私がポーラースターの代表を務める松田孝志という男を紹介されたのは、2012年の初頭。会社の応接室で、沈没船から財宝の積み荷を引き揚げるビデオ映像を見せられました。そして自社株を1株25万円で取得する形でこの事業に出資すれば、半年後には2倍になる、と持ちかけられました」
松田氏は「すでに引き揚げられた財宝がインドネシアの倉庫に眠っている」として、Aさんに次のように説明を続けたという。
「そのあとも実際にインドネシア近海で引き揚げる船が決まっていて、3~10隻を予定している。引き揚げ作業のドキュメンタリー番組をドイツのテレビ局が制作し、世界中に配信する。その放映権もポーラースターが持つ。インドネシア政府との契約は済んでいて、財宝は中国政府の要人に太いパイプを持つ人物を通じ、名目上は中国への寄付という形で、実は中国側が買い取ることで話ができている。中国で美術館を造り財宝を展示すれば、20億円程度の金が入ることになる、と」
そこでAさんは625万円で計25口を購入。ところが半年どころか、1年たっても1円の配当金もなく、
「松田は『相手は中国だから、なかなか予定どおりにいかない。必ず成功するからもう少し待ってくれ』と言う。そのあとも再三そんなやり取りがあり、結局、こちらが連絡しても電話に出なくなりました。そこで警察に相談し、告訴状を提出したのです」(前出・Aさん)
ポーラースターの内情を知る関係者によれば、
「出資者は約1000人で、1人平均1000万円ぐらい。10億円は集めていると思います。現金2000万円を積んだ車をフェリーに乗せて長崎まで行った、熊本県の人もいました」