常に「おもろい話」を求めているせいか、芸人として生きていると、信じられない瞬間が舞い込むようである。その数々の「逸話の扉」を開けてみよう。
「おもしろくないな、とっとと九州に帰れ!」
上京直後のタモリを一喝したのは、同じ事務所の先輩にあたる堺正章だった。もし、タモリが「巨匠」のひと言にビビってUターンしていたら、日本のバラエティ史は大きく変わっていたことになる。
そんなタモリが今もレギュラーを続ける「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)では、レギュラーの安齋肇氏の遅刻グセが有名。2人で作品を紹介する「空耳アワー」は名物コーナーだが、ある日、「1本も作品を紹介しなかった」という伝説の回がある。
「その日も安齋さんが1時間も遅刻してきたため、収録になってもタモリさんが『これは仕事じゃないのか?』などと執拗に突っ込み、ついにはタイムアップしたという不思議な回でした」(放送作家)
よくぞ出入り禁止にならないものだが、出禁といえば出川哲朗だ。
「ディズニーランドで立ちションしたため、2度と入れなくなった」
そう語る口調には、ネタとしておいしいといううれしさがアリアリだ。
さて、感動エピソードを持つのは明石家さんまで、「ファンが思いを書いた千円札を30年間持ち続けた」というもの。ある女子中学生が熱烈なさんまファンで、もしかしたら千円札に思いを書いたら、いつの日かさんまのもとに届くのではないかと‥‥。
そしてミラクルは起こり、さんまが偶然「さんまさん、大好きです」と書かれた千円札を手にした。さらに15年には番組で対面を果たし、その札を大事に持っていたことも判明。女性が感激したことは言うまでもない。
同じお札絡みでも、痛い目にあったのがマジック漫談のマギー司郎だ。白い紙がお札に変わるのは初歩的なマジックだが──、
「偽札を作っている男がいる!」
客が警察に通報し、マギーは「貨幣偽造容疑」で事情聴取を受けた。もちろん、すぐに釈放はされたが、ヒヤリとした瞬間であったという。
さて、近年は本格的なコント番組が少ないが、志村けんは「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」(86~92年、TBS系)の驚愕の制作費を明かした。
「毎週、1億円で作ってた」
バブル時代ということを加味しても、ぜいたくな予算であったのだ。
同じく太っ腹の恩恵にあずかったのは岡村隆史である。長らく休業していた時期があったが、復帰した時に中居正広が寿司屋に呼んでくれた。そこに用意されたのは「岡村と同じ身長のマグロが1匹」というから、どれだけの金額なのかと恐れ入る。
一方で悲惨な貧乏時代を過ごしたのが綾小路きみまろだ。若い時はカップ麺ばかり食べており、そのため「カップ麺の悪い油で肝臓が壊れた」と告白している。稼げるようになった今は、体にいいものを選んでいるのだろうか。
芥川賞作家の又吉直樹にとっての憧れは太宰治であるが、まさかの僥倖が舞い込んだ。上京した又吉は三鷹に住んでいたのだが──、
「そのアパートはもともと太宰治の邸宅があった場所だったそうです。あとで知った又吉が感激したことは言うまでもありません」(放送作家)
又吉はお笑い界の文学派だが、武闘派で知られるのはオール巨人である。堂々たる体躯を誇り、ついにはこんなデンジャラスな一戦も実現!
〈間寛平をあやうく絞めそうになった〉
番組で共演した2人が飲みに出かけ、内容面でストレスがたまっていた寛平が「1発殴らせてくれ」と巨人に提案。巨人は先輩の頼みを聞き入れたが、さらに「今度はクツで殴りたい」と言った瞬間に顔色が変わったそうである。最強の称号は今も健在のようだ。