尖閣諸島は沖縄本島から約400キロの距離にある5つの島と岩礁から成る。1895年に近隣国の支配が及んでいないことを確認のうえ、日本領とした。その後、民間人が入植し、1940年に無人島となるまで、かつお節工場を営むなど経済活動が行われていた。
70年代に入り、尖閣近海に原油が眠っていることを指摘されるや、中国や台湾が突如として領有権を主張し始める。以後、日本政府は一貫して「領土問題は存在しない」という立場を取っている。
しかし、この数年、尖閣付近の海域で中国は漁船とともに現れる漁船監視船による領海侵犯を繰り返している。さらに、中国は南シナ海で近隣国と領有権でもめている三沙諸島に人民解放軍の警備区を設けるなど、膨張を続けている。尖閣でも武力による占領はないとは言い切れない。その時、自衛隊は尖閣を守ることができるのか。
いきなり人民解放軍が尖閣にやって来るというわけではないですからね。だから、いきなり自衛隊うんぬんという話は現実的ではない。
想定しうるのは次のような事態です。最初は漁民が「嵐にあった」という名目で上陸し、それを保護するといって公船がやって来る。これに「退去せよ」と言うだけで厳しい対応をしなければ、今度は測量などを始め、既成事実を積み重ね、最後は軍艦がやって来る。
最悪の事態を阻止するためには、まずは自衛隊ではなく海上保安庁の能力を高めるのが重要です。それには巡視船を増やし、法整備をする必要があります。
現在、国会では海上保安庁法の改正案が提出されている。この改正案が成立すれば、不法入国者が上陸しても海上保安官に権能が与えられるという。それでも、まだ法整備は不完全なのだ。
日本には国連海洋法条約に定められた「無害でない通航」を罪に問う法律がない。だから、入管難民法などで対処できない態様の違法航行を取り締まれないのです。
ですから、我が国の防衛や安全を脅かす目的で情報収集をしているような船などを、領海に入った時点で取り締まれる法律を作らなくてはなりません。そして、それに対応する罪刑が重要なのです。懲役3年以上の罪を犯した者に対しては、危害射撃が可能だからです。これは、警察官職務執行法の準用です。
もちろん海上保安庁の手に負えないとなれば、自衛隊が出動することになるでしょう。すると、海上警備行動、もしくは治安出動ということになるのだけれど、これも法律的には警察権の行使に当たるわけです。
しかし、侵犯国の敵対的な意図が明らかになった場合には、我が国の対応は不法な侵略から我が国を守るための自衛権行使となるわけです。
そこで、事態の変化に応じ、警察権から自衛権までシームレス(継ぎ目のない状態)に対応できるよう、周囲を海に囲まれている日本として、適切な法整備と対処能力の構築が必要だと思っています。