百条委員会での豊洲市場に関する「石原発言」がきっかけで、小池百合子都知事がもくろむ夏の都議選後の驚愕シナリオが浮かび上がった。「移転の決断」を先延ばしして選挙で自民党を叩き潰し、単独過半数を得たうえで、豊洲の「安全宣言」をするというのだ。「オキテ破りのウルトラC」秘策の全貌とは──。
「作家であります」
証人喚問の冒頭で職業を問われ、しゃがれた声でこう答えたのは、石原慎太郎元都知事(84)。
居丈高な態度で椅子に座り、最初の質疑開始のまさにその時、先手を打ったのは石原氏だった。
「利き腕の左腕が使えず、字も書けませんし、絵も描けません」
と、2年前に患った脳梗塞の病状について説明し始めたのだ。
「『海馬』がうまく開かず、残念ながら全ての字を忘れました。平仮名さえ忘れました。記憶を引き出せないことが多々あります」
自爆テロのごとき「告白」から都議会の百条委員会は始まった──。東京・豊洲市場(江東区)の移転問題を検証するための3月20日の証人喚問の席上、石原氏は移転を決めた責任は認めたが、詳細な経緯になると、「担当者に一任し、記憶にない」と繰り返すばかり。
「前日には用地買収の交渉担当だった浜渦武生元副知事(69)の証人喚問も行われましたが、都幹部と東京ガス幹部の間で交わされた汚染処理などに関する“密約”については『知らない』と否定。石原氏からこれ以上真相が明らかになるのは難しいでしょう」(都政担当記者)
証人喚問の前から体調面が不安視され、3時間の質疑は1時間に短縮。石原氏の次男でタレントの石原良純(55)も健康状態を心配していたようだ。「親子」を知るテレビ局関係者が話す。
「ここ数カ月、マスコミが慎太郎氏の自宅前に大挙して押し寄せ、本人も父親となかなか会えないそうです。『親父、大丈夫かな?』と公の場でちゃんとしゃべれるのか、心配していました」
2月の定例会見では、「不仲」の小池百合子都知事(64)から、
「急に元気になったり、弱気になられたり。このあともどんな波になるか、わからない」
と皮肉を飛ばされたこともあった。
「一日の時間帯で、気分が一変する日々のようです。ただ、証人喚問での『平仮名さえ忘れた』発言は、周囲も初耳で驚きました」(石原氏と親しい関係者)
百条委員会には腕利きの弁護士も帯同。石原氏は、みずから発する言葉に神経をとがらせていたという。
「豊洲移転を巡る、石原氏の責任に対する住民訴訟が起こっています。都はこれまで『責任なし』としてきましたが、小池氏は『責任の再検証』を表明しました。石原氏としては、法廷に戦場が移った時、証人喚問の発言で“揚げ足”を取られないように、綿密に打ち合わせをして臨んだそうです」(前出・都政担当記者)
19日に土壌汚染対策に関する都の専門家会議が、地下水モニタリングの再調査の結果として、豊洲市場の地下水から環境基準の100倍となる有害物質のベンゼンが検出されたことを発表。証人喚問で、「環境基準以下にする約束だった」と指摘された石原氏は、
「厳しい基準を設置したのは間違いないが、ハードルが高すぎたかもしれない」
と漏らした。実は、この発言が、都議会掌握に向けた小池陣営を揺すぶることになったのだ。