麻丘めぐみ、森昌子、アグネス・チャンなどアイドル歌手が続々とデビューした72年、山口いづみ(62)もその一群にいた。やがて女優業にシフトチェンジし、数々の大ヒット作に花を添えている。
──デビュー曲「緑の季節」を発売したのは、17歳の時だったんですね。
山口 ええ、当時のアイドルでしたから、ヒラヒラのワンピースを着ておりまして。私、お姉さんぽい感じに憧れていたから、あの衣装は回避したかったです。
──わりと早い段階で女優メインになりましたね。
山口 シングルは4枚出して終わって、デビュー翌年の「雑居時代」(日本テレビ系)から本格的な女優活動を始めました。
──当時のアイドル歌手では群を抜く美貌でしたので、正解だったと思います。
山口 ありがとうございます(笑)。最初の「雑居時代」は、主演の石立鉄男さんの個性が強くて、それに視聴者の方も引っ張られていった形でしょうか。ふだんの石立さんは、二日酔いでいつも遅刻してらして、しかも、そのまま楽屋のコタツで寝ている方でしたが。
──古きよき時代ですね。その後は「大江戸捜査網」(テレビ東京系)の隠密同心・いさり火お紺や、「水戸黄門」(TBS系)で里見浩太朗扮する助さんの妻・志乃など、時代劇が続きます。
山口 何度かゲスト出演した「水戸黄門」は、第9部(78年)からレギュラー入りしました。うちの母親がこんなに喜んだ仕事はなかったですし、ロケに行くとお年寄りの方々が黄門様(東野英治郎)に手を合わせるんですよ。国民的番組の影響力はすごいなと驚きでした。
──驚きといえば、あの「エマニエル夫人」が初めてテレビ放映されたのが77年5月15日。この春に終了した「日曜洋画劇場」(テレビ朝日系)の枠でしたが、主演のシルビア・クリステルの吹き替えを担当されました。
山口 それまでで最高の30.8%の視聴率を取ったんです。それにしても「どうして私?」と思いました。それまでラブシーンもほとんどやってなかったから。
──劇場でも大ヒットしていただけに、テレビでどこまでオンエアできるのかと大きな話題になりました。
山口 ドラマ部分はいいんですけど、問題はベッドシーンにおけるアエギ声ですよね。実は事務所とテレビ局の話し合いで、濡れ場になったら「音楽処理」をするということで決着がついたんです。
──セリフではなく、BGMが流れているということですね。それは残念だったような(笑)。
山口 実は最近、テレビ版の「エマニエル夫人」がブルーレイ化されたんですよ。私のドラマ部分の吹き替えはそのままで、アエギ声はシルビアさんの本物の声を使っていました。
──さて、子育ての休業期間を経て活動を再開して、近年は歌手として再び注目されているとか。
山口 知り合いの方がクロアチアに旅行されるというので、ライブで歌える歌があったらいいなと思って、CDを買ってきてとお願いしたんです。そこに入っていた「ツェトリ・スタジューナ(四季)」をライブで歌い、ユーチューブにアップしたら、クロアチアで大変な評判になりまして。1日に2万以上ものアクセスがあったんですよ。
──ヒラヒラのワンピースではない「歌の力」ですね。