「伊集院さんの人生相談の本が当たってんだろ? だったら俺も人生相談やらなきゃな!」
今から1年半程前。WEBマガジン「ビートたけしのお笑いKGB」立ち上げにあたり、日々、あーでもないこーでもないと打ち合わせをしている中、殿が唐突に放り込んできた持ち込み企画です。ちなみに殿が言う「伊集院さん」とは、直木賞作家の伊集院静さんであり、さらにちなみに、伊集院さんと殿の関係は古く、伊集院さんが小説家になる前の、広告代理店勤務時代からの仲なのです。
で、先の発言から、「たけし人生相談」の連載スタートが決まると、
「ジャンジャン相談受けて、バンバン本にしてよ、これで夢の印税生活だな!」
と、相談を1件も受けていないうちから、一人勝手に妄想を脹らませては盛り上がっていました。
が、実際に「お笑いKGB」スタートとともに「人生相談」が始まると、想像どおり、どんな質問に対しても、まともに答える殿であるはずもなく、常に相談者を突き放す、かなりアバンギャルドな人生相談となっています。
さすがは、かつて「オールナイトニッポン」で、大量に寄せられた、悩み多き若者の相談に対し、「めんどうくせーよ。いちいち俺に相談すんな! 悩んでるヤツは死んじまえ!」と言い放った方です。そんな殿の人生相談も、何だかんだで1年を超え、現在も絶賛相談受付中であります。
「俺の人生相談もけっこう溜まったろ? そろそろ本にすっか!」
と、いよいよ夢の印税生活実現を見越した発言を漏らすのですが、そんな殿に、「殿、かなりふざけまくった人生相談ですから、いくら殿の本とはいえ、伊集院さんの本のようには売れないんじゃないですか?」と、当然の意見をぶつけると、
「だったらあれだよ。最後のほうにちょっとだけ伊集院さんに相談頼んでよ、それ載せてもいいしな」
と、聞いた瞬間、誰もが“それはもはや伊集院さんの本では?”と思わせる発言を、さらりと言い放つのです。で、さらに失礼を承知で言わせていただければ、何度も殿が漏らす「夢の印税生活」というのも、少しばかり「?」な発言です。40年近く売れ続け、芸能界のてっぺんに座り、いまだ爆進中の殿です。大変下品な推測ですが、誰もが“きっと恐ろしく稼いでいるはず”と勘繰るのは当然のこと。そんな方が、これから出す本の印税にワクワクする感じが、わからないのです。ですから、つい、「殿、今日までの稼ぎを本の印税に換算したら、何千万部じゃきかないじゃないですか!」と、ツッコミたくなります。そんなこちらの心模様を知ってか知らずか、「夢の印税生活話」をした後、必ずと言っていいほど、
「これで地獄の小遣い制からやっと抜けれるな!」
と、ある意味、殿の殺し文句である“何てったって、オイラは小遣い制のたけちゃん”発言を、忘れることなく放り込み、しっかりとバランスを取る殿なのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!