塩分のとりすぎは万病の元。すなわち高血圧の元であり、脳卒中などの脳血管疾患、心肥大などの心血管疾患などの原因になる──と言う説はよく知られたところで、この予防のために、厚労省は減塩を推奨している。
また、男女とも長寿日本一の長野県は、その秘訣を約30年前から取り組んできた「県民減塩運動」の成果だという。
そしてWHL(世界高血圧リーグ)が2005年以来5月17日を「高血圧の日」と定め、啓発に取り組んできたのだが、日本高血圧学会はさる4月28日の学会で、毎月17日を「減塩の日」にすると発表した。日本高血圧学会の伊藤貞嘉理事長はこのように語ったものだ。
「欧米諸国と比べて日本人の塩分摂取量はかなり多い。食塩と高血圧の関係はよく知られており、摂取量が非常に少ない地域では高血圧の人はみられず、加齢に伴う血圧上昇もほとんどみられない。世界保健機関(WHO)も,すべての成人の減塩目標を5gにした。日本人も1日6g未満になるよう啓発していきます」
しかし、異を唱える人がいる。近畿大学医学部薬理学教室の織田真智子講師だ。
「『塩を摂りすぎると高血圧・成人病になる』というのが現代の常識になっているが、その因果関係が科学的に実証されているわけではないばかりか、食塩が高血圧を引き起こす主たる原因ではない、という事実も明らかになっている。さらに減塩によって、無気力者、アレルギー、がん・奇形、認知症の増加、そして病原菌に対する抵抗力の衰えが指摘されている。仮に塩を多量に摂取しても喉が渇き、飲んだ水によって体外に排泄される。間違った減塩、行き過ぎた減塩が、今の社会に生じている種々の問題の原因の一つになっているのではないか」
人は塩なしでは生きられない。そして健康体であれば、自然に身体の均衡は保たれるようになっている。
自分の健康は自分の身体に聴くのがいちばんだ。もしかしたら、行き過ぎた減塩は本当は怖い!?
(谷川渓)