江川氏といえば、大騒動となった入団時の経緯があり、「江川は阪神OBだ」という、“生え抜き規定”に不適格との声も強く、今日まで監督就任は実現しなかった。しかも、解説では鋭い指摘を繰り返してきたが、コーチ経験すらなく、監督としての手腕は未知数である。それでも江川氏は、かねてよりコーチ要請をかたくなに断り、「監督なら」という対応で巨人と対峙したため、よけいに遠回りしてきた。
一方で、原氏が退任することになった15年、まだシーズン中に〈原監督V逸なら解任も〉という見出しがスポーツ紙に躍った。そして、〈次期候補にはOBの江川卓氏らが挙がるとみられる〉と奇妙な論調が続いたのも事実だ。
「実は、当時、球団から続投要請のなかった原氏をおもんぱかったメディア関係者が、球団を牽制するために動いて実現した記事だったといいます。実際に江川氏にオファーが出されることはありませんでしたが、原氏の胸中では、万一退任する場合にはバトンタッチできる唯一のビッグネームが江川氏だったんです」(スポーツ紙デスク)
原氏もやみくもに江川氏を推していたわけではない。渡辺恒雄読売新聞グループ本社代表取締役主筆(91)がバックアップしているのも大きかったと言われる。
11年11月に勃発した、いわゆる「清武の乱」を覚えているだろうか。
「ナベツネ氏が了承したとされる『岡崎ヘッド留任』を覆し、『江川ヘッド就任』をゴリ押ししたのが引き金でした。ただし、その構想は当時の原監督による要請だったことも明らかにされています。今でも原-江川のラインは良好で、「江川監督」が実現すれば、球団とは疎遠になりつつある原氏の協力体制も見込める。何より、ナベツネ氏が折に触れて『江川にやらせてもいいんじゃないか』と口にしてきました。くしくも鹿取GMと江川氏は同期入団であり、風通しのいい環境は出来上がっています」(前出・スポーツ紙デスク)
いずれにしても、監督就任には本人の意思が肝心だが、江川氏以上に巨人の監督に執念を燃やす人物がいる。中畑清氏(63)だ。
由伸監督が誕生した15年オフ、実は江川氏へのオファーはなかった一方で、中畑氏は候補者として検討されていたのだという。