しかし、自民党議員はこうした憶測を一蹴する。
「安倍総理は党内で2大派閥を作り上げ、そこから交代で総理を輩出しようと考えている。今年に入り、麻生太郎財務相(76)率いる為公会が他派閥との合流で党内2位に位置づけたが、これは“総理のご意向”だ。一部で麻生さんは安倍総理との不和もささやかれているが、実際は第一次政権時代、体調不良で退任濃厚となった時も『辞めるな』と説得したほど仲がいい。当然、この考え方にも賛同しているようで、側近は麻生さんの目的を『総理を派閥から輩出し、キングメーカー(影の権力者)になることだ』と漏らしているね」
つまり、支持率低下が著しい安倍総理といえども、都知事人気にすがろうという考えは毛頭ないのだという。一方で、今秋には悲願とされる憲法改正における自民党草案を提出する予定であり、小池氏の勢いを看過できない総理は自身の地位を盤石にする体制を敷きたい。
そうなれば、以前からしきりに報じられてきた、党内屈指の人気者・小泉進次郎衆院議員(36)の入閣が期待されるだろう。「8月中にも予定されている内閣改造で要請される」との声が永田町からも聞こえてきたのだ。
官邸関係者の中には「進次郎氏を入閣させることは党内の人材難を露呈させることにつながり、反政権メディアへ格好の材料を与えることになる」と懸念を示す向きもあるが、「切り札」を投入せざるをえないほど、安倍政権の焦りが見えてくる現状なのだ。
「支持を取り返すには、目立った人事案が必要です。今回の選挙演説でも『逆風は自民党自身がまいた種』と党への危機感を表明し、政権に批判的な発言もいとわなかった人気者を取り込むことができれば、党内における求心力を回復させる可能性もある。そのためにも、進次郎氏の意向を最大限に尊重するようです。提唱する『こども保険』を実現させられる厚労相や、被災地に関心が強いことから復興相ポストもやぶさかではない。後者はここ最近、大臣の不祥事が続いているということもありますからね。進次郎氏側からすれば、今後のキャリアを踏まえると、原発問題などで信条を異にする安倍政権と心中する必要はないものの、すでに執拗に本人を口説いている側近がいます。判断を下すのは進次郎氏本人ですが、色の付きにくい副大臣ポストなら首を縦に振るでしょう」(政治ジャーナリスト)
こうなれば、小池新党が国政へ殴り込む前に芽を摘む「対・小池タッグ」が成立する見通しとなり、すでに水面下で同調した動きも見られるのだ。
「都民Fで当選した都議会議員の身辺調査に着手している。実際、都民Fは候補者擁立にあたって正確な身辺調査を行えていない。鞍替え議員らも、今まで国政に比べれば杜撰な政務活動費を計上してきた。昨年の都知事選で小池氏を応援した『7人の侍』の中にも、所有する会社での不透明な会計がささやかれている議員がいる始末です。機を見てこうした情報を、メディアにリークしていくことになるでしょう」(政界関係者)
当然、批判の矛先は小池氏にも向けられていく。
「今までは自民党が議会を牛耳っていたため、問題が浮上しても、責任を押しつけることができた。敵を生み出す“小池劇場”で支持率を得てきましたが、今後は公明党の協力を得るなどして過半数を獲得すれば、責任は押しつけられない。さらに、地方行政は二元代表制を採用している以上、議会は小池氏の無計画さを追及しなければなりません。しかし、すでに財源の当てすらない築地市場と豊洲市場の並行利用をぶち上げ、来年には続々と提出される東京五輪の予算案も当初の額を大幅に超える見通しで、小池氏は独裁の片鱗を見せている。小池人気にあやかった議員が多いのに、責任追及はできるのでしょうか。逆に、見識が豊富な自民党都連による追及が始まれば、とても容易に逃げきれるとは思えません」(前出・政治ジャーナリスト)
国政を脅かす都政のトップといえども、危機感が募れば総理の思惑で排除に動く。潰瘍性大腸炎に悩まされる総理の、まさに“腹しだい”で決まってしまうのだろうか。