時の権力者が歩み寄りを見せる中、実は小池氏にとっても安倍総理に「後ろ盾」になってほしい事情があった。都政担当記者がこう語る。
「豊洲移転問題で株を上げた小池氏は、続いて東京五輪にメスを入れ、大会組織委員会の森喜朗会長(79)にケンカを売りました。施設費用の見直しに目をつけたまではよかったのですが、今の立場は非常に厳しくなっています」
ボート・カヌー会場に予定されている「海の森水上競技場」は、当初予定から約7倍の491億円に膨らみ、宮城県「長沼ボート場」への移転に向けて村井嘉浩県知事(56)と意見交換して、話が前進しているように思われた。それが一転、10月18日に国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(62)が来日すると、雲行きが怪しくなったのだ。全面公開された会談でバッハ会長は、
「開催都市として選ばれたあとに、競争のルールを変えないこと」
「成功は、それぞれの関係組織が一緒になって初めて獲得できる」
と話し、「壊し屋」小池氏に警鐘を鳴らしたのだ。その翌日には、組織委の事務所をバッハ会長が訪れた際、森氏と一緒に会見を開き、
「(森氏を)私の弟と呼んだほうがいいのかもしれない」
とヨイショして、2人の親密ぶりが明らかになった。
「20日の夕食会では、森氏の指示で安倍総理の隣にバッハ会長が座りました。和やかに談笑していましたが、小池氏の『長沼案』についての苦言も忘れなかったようです」(前出・都政担当記者)
森氏の作戦は、小池氏にとって詰めの一手となり、これで事実上、IOCから計画変更の了承を得るのが難しくなった。いまさら引っ込みがつかなくなった小池氏に、焦りの色が見えたのもこの時期だという。
「東京10区の補選で小池氏は、『圧勝してください。僅差の勝利では小池旋風にかげりが見えてしまう』と若狭氏に“指令”を出していました」(政治部記者)
12日間の選挙戦で小池氏も8回応援に入り、狙いどおりに圧勝。世論の支持を見せつけたことで、安倍総理にあらためて自分が「脅威」だと示す結果となった。
「小池氏は施設見直し問題で孤立した状態になりつつあります。安倍総理に接近することで、森氏だけではなく、自分にも官邸とパイプがあるとアピールしたかった。安倍総理にとっても人気者の小池氏を取り込むことにメリットがあるので、それぞれの思惑は一致しています」(浅川氏)
今後、競技場問題で安倍総理が手を貸して“秘策”を繰り出すのは、森氏との長年の関係上、ハードルは高そうだが、むげに突き放せない理由もあった。
10月30日には小池氏が開く政治塾「希望の塾」が開校。「小池新党」の礎作りになると見られ、その応募者は4000人を超えたという。入手した合格者に送られたメールには、全6回分の受講料として、男性5万円、女性4万円、学生3万円を27日までに振り込むように明記されていた。