7月2日に公式戦初黒星を喫し、連勝が29でストップしても、14歳の天才棋士がもたらした経済効果の勢いはとどまるところを知らない。公式グッズに勝負メシ、教育本、新たな観光地、さらには声かけ事情まで‥‥。安倍政権の「詰み」が伝えられる今こそ声を大にして言いたい。フジイノミクスが日本を救う!
「負けました」
藤井聡太四段(14)が公式戦で初めて投了の言葉を口にしたのは7月2日。若手棋士の中でも屈指の実力派である佐々木勇気五段(22)を相手どり、11時間30分もの熱戦を繰り広げたのちのことだった。これで全国民を熱狂させた藤井の挑戦はひとまず幕を閉じた。
「期待されていた“大台”の30連勝はかないませんでしたが、きちんと従来の記録を更新してから敗れたことは、彼が“持っている”証拠。年齢のことを考えると、今後も新しい記録をいくつも打ち立てていくはずです」(将棋観戦記者)
そんな期待を裏付けるかのように、敗戦の翌日も、主要スポーツ紙の一面を藤井が飾り、各局のワイドショーでも軒並みトップの扱いだった。
国民の目に「藤井ブーム」はどう映ったか。大阪府立大学知識情報システム学類マーケティング研究室の荒木長照教授は次のように分析する。
「アイドルの登場は、多くの人にその世界への理解を促進させます。藤井四段の報道は彼自身を広く知らしめるにとどまらず、将棋というゲーム、将棋関連の書物や物販、ネットの将棋関連サイトなど、あらゆるものへのアクセスや販売を促進するという意味で、大きな宣伝効果を有することになったと考えられます」
メディアが総力をあげてたきつけた藤井ブームで、将棋界全体もまた格好のPRができたというわけだ。
さて、こうした“過熱報道”を広告費用に換算すると、莫大な金額になるという。広告代理店社員が語る。
「メディアの報道が最高潮に達したのは、28戦目の対局が行われた6月21日から、負けてしまった30戦目の翌日の7月3日までの13日間。テレビだけをざっくり切り取っても、日テレ、テレ朝、TBS、フジの4大民放キー局では、各局とも毎日、朝から晩まで複数の番組で取り上げていました。仮に1日当たりの放送時間が1時間として、15秒のCM料金が50万円とすると、単純計算で62億4000万円もの金額を広告費として投入したPRに匹敵することになります」
また、インターネットのニュースサイトでも、藤井の勝敗や、一気にブレイクした加藤一二三九段(77)ら将棋関係者の記事が幾度も掲載された。
「『YAHOO!JAPAN』のような超大手の場合、トップニュースに記事が1回載るだけで、数億円規模の宣伝効果があると言われています」(ITライター)
新聞など紙媒体のメディアを合わせると、宣伝効果は計り知れない。