その後も非公式でのトップ棋士との戦いは続く。18年には「AbemaTVトーナメント」が開催。今大会では羽生発案の特別ルールが採用されるなど、よりゲーム性が高まり、将棋ファンの間でも話題を呼ぶイベントにまで発展しているのだ。
「持ち時間5分で一手指すごとに5秒ずつ追加される『フィッシャールール』を採用。もともと、チェスで用いられていたルールで、持ち時間がなくなると敗戦となります。公式戦にも『NHK杯テレビ将棋トーナメント』や『将棋日本シリーズ』のように持ち時間10分の早指しルールを採用した大会はありましたが、それを超える『超早指し』が求められる対局になります」(将棋関係者)
本来、将棋の公式タイトル戦は長丁場。棋士の中でも比較的長考タイプの藤井は、早指しというトリッキーなルールに苦戦するかと思いきや「火事場のバカ力」を発揮したのだ。
「藤井七段は序盤と中盤に時間をかけるタイプです。その分、終盤に持ち時間が少なくなるケースが多い。ですが、【4】詰将棋が得意なので、たとえ時間がなくてもすばやい寄せで相手の急所を見抜いて、正確な手を秒で指すことができます」(大橋六段)
幼少時から現在まで詰将棋にハマッているという藤井。詰将棋の解答の正確さと速さを競う「詰将棋解答選手権」では15年~19年に5連覇するなど、早くから「早指しの達人」としての呼び声は高かった。その実力は遺憾なく発揮され、「Abemaトーナメント」第1回、第2回と2連覇を達成。開催中の第3回大会においては、これまでの個人戦からチーム戦に変わっても、その実力は歴然。藤井七段の早指しはさらに磨きがかかっている。
「特に持ち時間3分を切ってからは圧巻のスピードです。持ち時間をキープしながらもミスなく指し続けます。ネット番組を観戦する将棋クラスターの間では『ウルトラマン聡太』と褒めちぎるコメントが出るほどの盛り上がりを見せました」(将棋ウオッチャー)
長丁場の対局と短時間勝負の詰将棋。どちらも才能を遺憾なく発揮する藤井の「怪物」ぶりに注目したい。
(アサヒ芸能7月16日号に掲載)