「もう立派な後期高齢者なんだからよ。頼むぞ、おい‥‥」
2016年3月2日、「ビートたけし“ほぼ”単独ライブ・第三弾」のため、会場の浅草公会堂に到着した殿は、楽屋に入るなり、「では、リハーサルお願いします」とスタッフにせかされると、わざとらしくよろめく仕草を見せ、“もうちょっと休ませてくれよ”といった感じで、先の言葉を漏らしながら、楽屋からステージへと移動したのです。
この日のライブは、まず、放送禁止全開なトークを1時間15分程ノリノリで披露され、いったん舞台からはけ、着替えを済ませると、今度は事務所の森社長がギターを務める「オフィス北野バンド」を従え、“生歌”ミニコンサートを炸裂させたのです。
「前半のトークよ、あんまりしゃべっちまうと声が飛んじまって歌が歌えなくなるから、途中から気ぃ遣ってセーブしたよ」
トータル約1時間45分のライブを終えると、興奮した様子の殿は、私服に着替えながらこうも漏らすと、
「だけど歌は疲れるな。もうヘトヘトだよ」
と、続けたのです。
しかし、ビートたけしの弟子になれてよかった! と、改めて痛感した、大変素敵な一夜でした。
ってことで、ざっとライブ当日の流れを改めて記します。
17時半開場。前説等の余興は一切なし。18時35分、5分押しでライブスタート。ツッコミ・進行役のわたくしと〆さばアタルの2人がまずは舞台へ登場し、「殿、さっきまでいたんですが、本番直前に姿をくらましまして」と、お客に説明していると、長渕剛の「とんぼ」が大音量でかかる。そこへ、現在絶賛お騒がせ中の、元プロ野球選手がかつて在籍していた球団のユニホームを着た殿が登場。横には、その方の元友達で“ヒゲぼうぼうの、やはり元プロ野球選手”のコスプレをした義太夫さんを引き連れて。
当たり前ですが、劇場が揺れるほどドッと沸く。
もうそこから先は、お伝えできない毒ガストークでウケにウケる殿。
で、ミニコンサートでさらに沸き、ラスト「浅草キッド」で観客を泣かして、フィニッシュとなったのです。そして打ち上げへ。
打ち上げ会場は煮込みの「もつくし」へ。「もつくし」は、殿がまだ何者でもなかった浅草修行時代、師匠・深見千三郎さんに幾度となく連れてきてもらった、お好み焼き「つくし」の系列です。当時の、27~28歳頃の殿をよく知る、今も元気な「つくし」のママが「深見の師匠とうちに来てた頃は、まー暗い子で、全然しゃべらなかったから、たけちゃんが売れた時はホントびっくりしたわよ」と、爆笑挨拶をかますと、殿は笑って吹き出しながら、
「ママは俺の若い頃をよく知ってるから、今も頭が上がらないんだ。ママ、今日はお世話になるね」
と、にこやかに挨拶され、宴はスタートしたのです。そして深夜まで‥‥。殿、お疲れさまでした。そして、ありがとう浅草!
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!