「どのくらい応募があったんだ?」
以前、無事幕を閉じた「たけし“ほぼ”単独ライブ・第三弾」のライブ前、殿はチケット抽選応募数を何度も確認されていました。殿のライブは、毎回、アトランダムな抽選方式にてチケット当選者を決定しています。というのも、毎回大幅に定員を超える応募があるからです。この度のライブも、1000枚程のチケットを巡り、応募が殺到した結果、相当数のファンの方々が抽選に漏れてしまったことになります。
で、先の殿の問いかけに、「○○○人程の応募を頂き、7倍くらいの抽選倍率になりました」そう報告すると、
「そうか。そんなに観れないファンがいるのか‥‥」
と、実に真剣な顔つきで“困った顔”をされた殿は、やや間を置くと、
「ちょっとあれだな。次はもっとデカいとこでやらなきゃダメだな」
と、やはり“マジ”なトーンで、“毎回発生するチケット抽選問題”への解決案を提示されたのでした。
そして、
「本当に観たいファンが観れないってのは、ちょっとかわいそうだよな」
と、嘆いたのです。
殿はライブ終了後も、たびたびこのチケット問題を嘆いていました。
弟子のわたくしが、こんな言い方をするのも大変生意気ですが、殿という方は、ファンに対しいつだって大変優しく、“マジメ”なんです。以前、グレート義太夫さんからこんな話を聞きました。
もう20年以上昔、軍団さんが何かのイベントで、集まったファンの方々に、それぞれ持ち寄った私物をプレゼントするといった企画があったそうです。
この時、軍団さんが持ち寄ったプレゼントは、どこかのテレビ局からもらった粗品だったり、番組でもらったTシャツだったりと、そのどれもが“自分で購入した物でなく、タダでもらった物”ばかりだったため、それらの品を目にした殿は烈火のごとく軍団を叱りつけたそうです。さらに、“普段使っている物や、あげるのが惜しいと思える物をあげるからプレゼントになるのであって、自分が興味のない、いらないものをあげるのはファンに対し失礼である”といった説教を、かなり強くしたそうです。
またしても弟子の分際で大変生意気な物言いですが、殿の“人間としてのまっとうさ”“性根の優しさ”“ファンに対するマジメさ”が、実によくわかるエピソードだと思います。
そんな殿と、ネットマガジン「お笑いKGB」の打ち合わせ中、「近いうちにどこか小さな会場で、会員を招待するささやかなオフ会を開きましょう」といった話で盛り上がったのですが、ファンに対していつだってマジメな殿は、
「来たい人もいっぱいいるだろうから、やっぱり1000人くらい入れるとこでやったほうがいいだろ」
と、“もはやそれはささやかなオフ会でなく、普通に殿の単独ライブです!”と思える提案を、大真面目に炸裂させるのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!