エンタメ

「監督・北野武」その男、鬼才につき(7) 津田寛治を素人から抜擢した「アドリブ撮影」の感性

「悔しい表情はなくていい」

 北野組の場合、ストーリーに沿って撮影される順撮りが基本。それだけに役者は、ストーリーの序盤に登場するか否かが重要な要素となる。オープニングに近ければ近いほど、少しの出演シーンでも膨らむ可能性があり、逆に後ろのほうだと、どんなに大きい役でもストーリーが変わって、出番がなくなってしまうこともあるのだ。

「撮影中にストーリーが変わるなんてことは、他の監督では、ほとんどないことです。予算がないとできないことですから。有名な話ですが、『ソナチネ』の時に“隠れが”として、家を一軒建てたんですね。セットとしてではなく、本建築で。でも、監督は結局、それを最後まで使わなかったんですよ(笑)」

 日本映画の中では資金が潤沢な北野映画ならではの豪快なエピソードである。

 そして北野映画の信条は、ナチュラルな演技だ。

 津田は、「キッズ・リターン」で監督が安藤政信に指導している姿をたまたま目撃した。悔しい思いをして立ち去るというシーンのテストで安藤の演技を見て、北野監督はこう言ったという。

「悔しい表情はなくていいや。悔しいと思うだけで表情は変えないで。映画ってテレビと違って大きい画面で映るから、思うだけで伝わる。表情はなくても大丈夫なんだよ」

 自分への指導ではなかったが、津田は感銘を受けた。

「舞台は別なんでしょうけど、映像は体感する仕事なんだと。役者ってのは、表現者ではなく、感じる仕事であって、表現する仕事ではないんだと思いましたね」

 デビュー作を含め、過去7作品もの北野映画に出演してきた津田だが、役者に限らず、世の中のどんな仕事でも「最初に何をしたのか」ということが重要なことだと感じている。

「いきなりどやしつけられたり、自分のプライドを傷つけられたら、たぶんつらい思いがどっかに残っていて、現場というものは怒られるものなんだ、怒られても頑張るものなんだ、と思っている俳優さんはたくさんいると思いますよ。僕の場合、『ソナチネ』で本当によかった。映画って夢のように楽しいものなんだ、ということを最初に植え付けていただきましたから」

 だからどんなに苦しい現場でも、無意識のうちにちゃんと楽しみを見つけられるようになった。

 いち素人を抜擢し、一人前の役者へと育つ道筋をつけてくれた、北野監督への感謝は尽きない。

「北野監督との出会いはビッグバンでした。物語の作り方、役者のあり方、映画の作り方から何から、自分の中で渦巻くように成長していった。グワッーと一気に広がって、そこからそれがしぼむことなく、徐々に広がり続ける“もの”をいただいたと思っています」

 ドラマ、映画での俳優活動のほか、みずから短編映画の監督を務めるなど、活躍の幅を広げる津田。“北野イズム”の遺伝子はしぼむことがなさそうだ。

カテゴリー: エンタメ   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
フジテレビ衝撃の報告書に登場する「タレントU」は「引退」を口にした!当てはまる人物は…
2
最終回に姿なし「ワイドナ弁護士・犬塚浩」フジテレビに愛された男の「静かな降板劇」
3
ミャンマー巨大地震が隣国タイにもたらした大問題「廃墟化した建物」「建設放棄ビル」が崩れ出す!
4
巨人・坂本勇人「2億4000万円申告漏れ」発覚で「もう代役・中山礼都の成長に期待するしかない」
5
藤浪晋太郎と青柳晃洋「暴投・死球・ノーコン」で「阪神投手コーチはストライクの投げ方を教えていない」強烈皮肉