当然ながら、地元釜山では住民の怒りが爆発。
〈古くて危険な古里1号機は早く廃止しろ〉
こんな横断幕を掲げて反対運動を行ったのは、反核釜山市民対策委員会なる団体である。反対運動に参加する住民の一人も憤りを隠さない。
「覚醒剤事件を機に、全ての職員に対して薬物検査を実施することが発表されましたが、もはや原発に対する住民の信頼はガタ落ちになった。もし原発で火災が発生した場合、麻薬に冒された職員がちゃんとした行動を取れるのか。釜山市民の74・7%が古里原発に不安を感じ、71.5%が廃炉にすべきとの意見を持っています。1号機が廃止されないことでどういう対策を取っているのか、釜山市に質問状を出しましたが、明快な回答はありません」
さらに韓国のさる国会議員は、事故を続発させる体質をこう斬り捨てた。
「こういう情報をちゃんと公開しないのは、典型的な伏魔殿だ」
韓国の原発事情に詳しい、関西学院大学総合政策学部の朴勝俊准教授は、それでも原発を稼働させたい理由を次のように説明した。
「韓国では原発の運転コストが非常に安いんです。発送電が分離されており、発電所は韓国水力原子力という国営企業が運営し、同じく国営の韓国電力が送電と小売りを独占している。韓水原は株式市場のような電力取引所で電気を売り、しかも発電費は取引価格相場より安いため、必ず儲かることになっています」
要するに、金の問題なのだ。朴准教授が続ける。
「さらに、韓国政府として低炭素グリーン成長戦略、つまり地球温暖化対策に力を入れており、その目標達成の柱が原発なんですよ」
原発によって温室効果ガスを減らして地球環境に貢献し、国際社会にアピールする。現在、韓国の原発はすでに21基に達し、そのほとんどが日本海側の沿岸部に位置している。目標達成のため、韓国政府は原発の比重を11年32・7%から30年には59%にまで増やそうとしているという。事故を連発しようが、ニセ部品を使おうが、職員が逮捕されようが、あくまで国策として、原発をガンガン稼働させるつもりなのである。
だが、政府の強引なやり方に対し、反対運動に加わらない住民がいるのも事実。その理由はとても聞き捨てならないものだった。
「古里で大爆発が起こったら、韓国よりも日本に悪影響があることは皆、知っている。放射能の大半は日本へ行くからいいや、と楽観視しているから・・・・」