とはいえ、大手ブックメーカーによるサトノダイヤモンドの評価は、フォワ賞の4着で単勝6倍から17倍に大きく後退。その中で圧倒的な支持を得ているのが3歳牝馬のエネイブルだ。
東京スポーツでコラム「海外競馬解析」を執筆する秋山響氏が、今年の展望について解説する。
「エネイブルが中心でしょう。ここまでGIを4連勝中で、その合計着差は20馬身にも及ぶ。レースセンスが高く、先行力があり、馬場のよしあしも問いません。さらに、凱旋門賞史上最多4度を誇るデットーリが騎乗する点も強みですね。愛オークス(7月15日)から中1週でキングジョージVI世&クイーンエリザベスS、そこから中3週でヨークシャーオークスと進んだところの疲れが少し心配ですが、それ以外はこれといった死角がない。軸としては最適です」
専門紙流に言えば「軸不動の相手探し」となるが、その相手が難解だ。秋山氏からは、良馬場条件で次の2頭の名前があがった。
「昨年の2着馬ハイランドリールは、3歳から3年連続でGI2勝。今年のドバイシーマクラシックやキングジョージVI世──では、いいところがありませんでしたが、敗因は渋った馬場。良馬場でこその馬です」
この馬は昨年1~3着を独占したオブライエン厩舎で、同厩舎は今年すでにGIを18勝している。
「もう1頭はユリシーズ。今年に入って本格化してGIを2勝。キングジョージVI世──では、エネイブルに4馬身半差をつけられましたが、これは道悪(稍重表記も、実際は重馬場に近い)でのものでした。課題は距離延長でしょう」
重馬場になれば、フォワ賞を制したチンギスシークレットと、昨年の3着オーダーオブセントジョージは要注意だと秋山氏は続ける。
「前者は芝2400メートルの重賞を3連勝。良馬場は未知数ですが、馬場が渋れば買いたい。今年5戦して唯一の敗戦は苦手の左回りでのものでした(シャンティイは右回り)。後者は前走のGI愛セントレジャーを9馬身差で圧勝。本質的には2400メートルより、もう少し距離があったほうがベターですが、昨年の走りから十分に守備範囲です」
一方、前出・牧野氏は、凱旋門賞を含む7戦無敗の名牝ザルカヴァの仔、ザラックをダークホースとして推奨する。
「仏ダービーは2着でしたが、GI初制覇を飾った今年のサンクルー大賞の追い込みは、実に鮮やかでした」
そのザラックをガネー賞で退けたクロスオブスターズを秋山氏は警戒するが、
「休養後、約4カ月ぶりのレースとなったフォワ賞は、いかにもトライアル的な走りで2着でした。フォワ賞組は92年のスーボティカ以降、勝ちはありませんが、同馬を管理していたのが凱旋門賞史上最多7勝を誇るA・ファーブル調教師。スーボティカもフォワ賞2着からの巻き返しでしたし、型どおり上向けば一発もあります」
他にもオブライエン厩舎の隠し玉と言われるウインターや、欧州3歳牡馬ナンバーワンの呼び声高いクラックスマンなど、今年の凱旋門賞もまた、見どころ十分の戦いになりそうだ。