歴史的な日本馬初Vを狙うマカヒキに立ちふさがる外国勢も、多士済々。出走予定馬には英ダービー馬や仏ダービー馬もいて、初対決が楽しみだ。現時点で(9月22日現在)秋山氏が真っ先にあげる馬は、ポストポンド(牡5)とファウンド(牝4)の古馬勢だ。前者は今年3月のドバイシーマCで2冠馬ドゥラメンテを破ったといえば、覚えているファンは多いのではないか。2着のドゥラメンテが落鉄していたとはいえ、コースレコードを更新しての快勝だった。
「前走のGI・英インターナショナルSまで、4つのGIを含む6連勝中です。スッと好位を取れる先行力と競馬センスがあり、しまいの決め脚も抜群。そのうえ、馬場状態も問わない。安定感抜群で、最も死角が少ない」(秋山氏)
後者は昨年の米GI・BCターフの勝ち馬だ。秋山氏がさらに解説する。
「これまで18戦して3着を外したのは、直線でスムーズに馬群をさばけなかった昨年の凱旋門賞だけです。良馬場でも重馬場でも、ペースが遅くても速くても、確実に上位に来る」
ただ、GIで2着9回と、シルバーコレクターと呼ばれるだけに、連軸向きかもしれない。
古馬の牡勢は07年のディラントーマス(牡4)の優勝を最後に8連敗中だが、舞台の替わる今回、データが覆っても驚くことはない。
逆に結果を残してきたのが3歳勢だ。古馬よりも3.5キロ軽い斤量面が有利といわれ(牝馬は牡馬より1.5キロ軽い)、95年の設定以降、3歳馬が16勝で、古馬の5勝を圧倒している。今年の仏ダービー馬・アルマンゾル(牡3)を推すのは、牧野記者だ。
「ダービーは9番人気での載冠でしたが、凱旋門賞へのステップレースの一つ、GI・愛チャンピオンSは最後方からゴボウ抜き。最後にファウンドを競り落とすなど、春先より一皮剥けた印象でした」
英国ブックメーカーの評価もアップ。単勝17倍から6倍に跳ね上がったものもある。
秋山氏が注目する3歳馬は、牝馬のラクレソニエールとレフトハンド。今年6月の仏オークス(芝2100メートル)の1着と2着馬だ。前者は今年の仏1000ギニーも制した牝馬2冠馬で、ここまで8戦全勝である。
「3歳牝馬は過去10年で3勝。54.5キロという斤量は魅力ですよね。課題は距離の延長でしょうか」
ラクレソニエールの鞍上は、日本でもおなじみのC・デムーロ(24)。
「前走後、『余力十分で勝てた。スピードある馬だけに本番が楽しみ』と答え、ライバルを聞かれると、1番人気が予想されるポストポンドの次に『マカヒキ、ハーザンド』と3歳牡馬をあげていた」(前出・牧野記者)
ラクレソニエールが株を上げたきっかけは、レフトハンドが出走したステップレース、9月のGI・ヴェメイユ賞(芝2400メートル)での快勝だった(ラクレソニエールは不出走)。前出・秋山氏が振り返る。
「(マカヒキが勝った)ニエル賞よりも前半1400メートルが3秒近く速く流れたにもかかわらず、上がり3ハロンは0秒05遅いだけの34秒03。レース全体のレベルは、ニエル賞よりも高かった」
距離も克服済みで、ある程度、前で競馬ができる点も強みだという。