9月24日、今季限りでの引退を表明している千葉ロッテマリーンズ・井口資仁がZOZOマリンスタジアムで行われた引退試合で、9回に劇的な同点ホームランを放ち、これ以上ない有終の美を飾った。
試合は延長12回裏に鈴木大地のサヨナラタイムリーヒットで勝利、井口の引退に華を添えた。
試合後の引退セレモニーでは、ロッテで二遊間を組んだことのある阪神・西岡剛や、自主トレを共に行ってきた阪神・鳥谷敬ほか、ダイエーホークス時代の監督・王貞治氏、チームメイトの城島健司氏、川崎宗則のVTRコメントがバックスクリーンに映し出され、現地には柴原洋氏、小久保裕紀氏、斉藤和巳氏が足を運び、花束を手渡した。
井口自身も中軸を務めた、泣く子も黙る「ダイハード打線」のそろい踏みに、思わず全国の野球ファンも胸をアツくさせたことだろう。
2003年、プロ野球史上最高チーム打率.297を誇った「ダイハード打線」は、1番・村松有人/2番・川崎宗則/3番・井口資仁/4番・松中信彦/5番・城島健司/6番・バルデス/7番・ズレータ/8番・柴原洋/9番・鳥越裕介という打線。スタメンのうち村松、井口、松中、城島、バルデス、柴原が打率3割を超え、3番~6番の100打点カルテットが稼いだ打点は455点。規定未満は途中入団のズレータと鳥越だけだが、ズレータは左殺しの大道との併用、鳥越は守備のスペシャリストとしてのレギュラーだったのだから、もはやスキなし。
ちなみに投手陣も20勝した斉藤和巳を始め、和田毅、杉内俊哉の3人が2ケタ勝利。最強打線に最強投手陣は日本一も当然だ。
当時、パ・リーグ球団のエース投手を務めたあるOBはこう振り返る。
「ホームランを打ちまくる主軸、足を使ってくる出塁率の高い選手がそろっていて、1番から9番まで気を抜けるところがない。ツーアウトからあっという間に失点してしまう。それで二巡目、三巡目にはやられるんです。ダイエー戦は本当に疲れました(笑)」
同年、セ・リーグでは阪神タイガースの「第三次ダイナマイト」が火を吹いた。今岡誠・赤星憲広の1、2番に金本知憲、桧山進次郎、アリアスのクリーンナップ。濱中治・片岡篤・アリアスの「平成の三連発」も印象深い。
2001年の大阪近鉄バファローズ「代打逆転サヨナラ満塁お釣りなし優勝決定ホームラン」イヤーの「いてまえ打線」も振り返っておきたい。
55本塁打のローズに132打点の中村紀洋を筆頭に礒部公一、吉岡雄二も円熟期に入り、川口憲史や先の優勝決定ホームランを放った北川敏弘が指名打者、代打の切り札として控える、チーム防御率最下位の4.98をカバーした「奇跡の打線」。
当時は「やられた!」と怒りに震えた対戦球団のファンも、時の流れとともによき思い出となるのがプロ野球の魅力。間もなく今シーズンも全日程が修了する。史上最速優勝のソフトバンクホークス打線も、リーグダントツの赤ヘル打線も、10年もすれば全野球ファンにとっての共有の財産になることだろう。