テリー その後、映画「マルサの女」で、大地さんは一気にブレイクしますね。伊丹十三監督との出会いは、どういうことから?
大地 それがまた不思議な話で、映画の神様が引き合わせてくれたようなところがあります。私が演じた伊集院という役は最初、別の有名な役者さんで決まっていたんですが、その方がクランクイン直前に降りてしまったので、急遽、別の役者を探すことになったんです。
テリー あれ、さっきの話に似ているような(笑)。
大地 で、監督が「誰かいい役者、いないか」とテレビをつけた時、たまたま「深川──」が映ったらしいんですよ。あのドラマは好評だったので、その頃、年に1回くらい再放送をやっていたんです。で、「こいつ誰だ、すぐ呼べ!」ということになったらしくて。
テリー またしても急遽の参加だったんですか。
大地 おかげで「ピンチヒッター役者」なんて、よく言われます(笑)。
テリー そこで卑下されることはないですよ。大地さんは、しっかりホームランを打っているんだから。ところで、伊丹さんって、どういう方でしたか? 僕は高校時代から、伊丹さんをファッションリーダーとして注目していたんですけど。
大地 本当に多才でしたね。ご自身も俳優をやっていらしたから、現場で俳優さんを絶対に緊張させないです。「楽に、リラックスして、いつでもいいですよ」という感じで、状況を見ながら、声も張らずに「よーい、スタート」。現場でどなる監督さんが多いですけれど、伊丹さんは全然そんなことはありませんでした。
テリー 「お葬式」を観て、伊丹さんは「みんなが悲しんでいる時にも冷静に人間分析をするような、特別な才能を持った方なんだ」と驚いたんですよ。だからこそ、そんな大地さんの魅力を見つけてくれたと思うんですけどね。
大地 「マルサ──」でやっとまともな役がいただけるようになって、メシが食えるようになりましたからね。だから、伊丹さんという存在がなかったら、私は今、ここにいないです。
テリー 大地さんみたいな役者さん、今の日本になかなかいないですよね。
大地 いえいえ、そんなことないでしょう。
テリー いや、年を取れば取るほど味が出てきて、今回の映画のような大道芸人の役で主役を張れる役者さん、そうはいませんよ。
大地 ありがとうございます。ある調査で、今「自分はダメな人間だ」と思っている若者が日本に83%もいることがわかったんです。韓国は31%、中国は39%、アメリカは52%ですから日本はダントツに多いんです。
テリー うーん、自分に自信が持てないんですね。
大地 親に言われたから、友達もそうだから、と学校に行き卒業して、自分の意思がないまま就職していく。そのため、会社で適応できず、対話力もないため、居場所がなくて悩んでいる若者が自分の周りにもいて、これは未来の深刻な問題だ、と危機感を抱いているんです。そういう若者に、私なりにエールを送りたいと思って「じんじん~其の二~」を作りました。といっても娯楽作品ですから、大いに笑って、楽しんでいただければと思います。
テリー 大地さん、これはいいシリーズになりそうですね。10本、20本と続けてくださいよ。
大地 ハハハ、そのためにも、ぜひ皆さんにご覧いただかないと。呼んでいただければ、日本中どこでも行きますので。
◆テリーからひと言
初対面だったけど、とてもアツくて真面目でユーモアのある人だね。この映画をシリーズ化して、平成の寅さんになってください!