ところで前述した、たばこ税や酒税の値上げについては、みずから1日2箱を吸い、大酒豪でもある野田総理が「税制を通じたオヤジ狩りだ」と発言したはずだった。これについて、野田グループに近い民主党幹部は〝真意〟をこう語るのだ。
「たばこや酒だけをターゲットにするなとの議論が必ず出て、野党に追及される。だったら消費税にしましょうか、となるためのトラップです。『オヤジ狩り』発言は、反対のアドバルーンを上げておく、パフォーマンスの色合いが強い」
そこで、かねてから野田総理が口にしている「消費税10%」構想の浮上である。
「変則的な消費税アップの案があるようなんです」
こう明かすのは、民主党代議士秘書である。いったいどんなシステムなのか。続けて説明してもらおう。
「店内と店外で税率が違うというもの。例えば居酒屋で飲み食いすると、サービスを受けたことになるので、消費税10%。これを、スーパーで缶ビールを買って公園で飲むと5%で済む。あるいは牛丼屋で食べると10%、持ち帰ると5%。10%ということになると、ただでさえ所得増税のアオリで小遣いを減らされたサラリーマンは、気軽に居酒屋で飲めない。そこでコンビニなどで缶ビールと焼き鳥缶を買ってきて公園で飲む、あるいは会社の空いている会議室で宴会をやるとか。いたるところでゴザを敷いて飲んでいる姿が見られるかもしれません。これは日本経済にとっていいとは言えない」
居酒屋チェーンなどでは客離れを防ぐため、5%分をかぶるところが出る、との声もあり、
「アルバイトの給料を下げる、あるいは生ビールのジョッキ半分近くを泡にする、とか。しかし政治判断でこの品物にはかける、これはかけない、ということになれば、その業界から圧力や裏金が発生しかねません。この増税を回避するため、××センセイのパーティ券をいっぱい買わないと…とか」(民主党担当記者)
給料に、たばこ、酒、飲食店、電気代──。ありとあらゆる方法での増税地獄に、森氏も深刻な表情だ。
「だから家計は逼迫し、庶民の暮らしはひどいことになります。物を買わなくなり、商店も飲食店も観光産業も売り上げは激減。タクシーにも乗らなくなるし、遊びに出かけられないから風俗業界もレジャー産業も下火になる。製造業だって15%節電が続き、生産を15%落としてようやく持ちこたえている状況なのに。デフレが止まっていない中、負のスパイラルで、庶民生活は坂道を転げ落ちていきます。数年前に話題になったように、年末になると公園が生活困窮者であふれ返るのではないか」
トドメはぜいたく税。貴金属や車などの高級品や海外のブランド品に、高額税率をかけるというものだ。
「車もおいそれとは買い替えできなくなる。女性の消費行動も地味になり、経済は縮小します。銀座のクラブホステスにヴィトンやシャネルのバッグを買ってやる一部上場企業の取締役などは、出費がかさみますね」(前出・民主党担当記者)
はたしてこれが、ドジョウの泥臭い政治なのか。国民の怒りが爆発し、ドジョウがさばかれる日はそう遠くない。
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