19年ぶりの日本人横綱として期待された稀勢の里(31)は、春場所こそケガを押して連続優勝を成し遂げたものの、その後は2場所連続で途中休場し、先場所は全休場となった。
「ファンは今度出る時は優勝しないと満足しないでしょう。少なくとも、15日間務められる体に戻ったことを見せないと納得しない。稽古では休場明けの高安を三番稽古で圧倒していましたが、稽古と本場所は違いますからね」(相撲ジャーナリスト・中澤潔氏)
ここにきて、先の春場所で傷めた左上腕部の「再悪化」も漏れ伝わってきた。
「巡業の前半こそ仕上がりのよさが伝わってきましたが、後半はちゃんとした稽古ができていない。四股やスクワットなど相撲を取らない稽古ばかり。左上腕の状態がよほどよくないのでしょうか、上半身の不安を下半身の強化でカバーしようという考えなのかもしれませんが、この状態だと、場所前に休場を発表する可能性もゼロではありません」(相撲関係者)
東京・中野で「ごっつハンド」を経営する元小結の三杉里は、
「横綱は優勝争いに絡む成績を残すことが宿命。勝負をかけるのは来年1月の初場所にすべきです」
と言ってはばからない。
それでも強行出場が濃厚な稀勢の里にとって、鍵となるのが新小結・阿武咲(21)との一番だという。
阿武咲は新入幕となった五月場所以来、3場所連続で10勝5敗という好成績を残している。
「ちょっと気が早いかもしれませんが、4場所連続で2桁勝利をあげれば、大関も見えてきます」(相撲担当記者)
満身創痍の横綱と上り調子の新小結。両者には浅からぬ因縁があった。
「部屋が比較的近いこともあって、稀勢の里は阿武松部屋へ頻繁に出稽古に出かけていました。恐らく横綱として、阿武咲に格の違いを見せつけ、恐怖心を植え付ける目的もあったはず。2人でよく三番稽古をしていましたが、阿武咲も負けっぱなしではない。懐に入って一気に持っていく電車道も見られました」(前出・相撲担当記者)
九州場所での初対戦は見逃せない大一番になりそうだ。
「阿武咲は稀勢の里への尊敬や憧れを口にしていますが、いざ土俵に上がれば相手が横綱だろうと、ケガなどおかまいなしに攻める相撲に徹するはずです。稀勢の里としては、バクダンを抱える左腕をおっつけられ、絞り上げられれば、厳しい展開になるでしょう」(前出・相撲関係者)
出場危機説も流れる中、今度こそ日本人横綱の意地を見せられるか。