はたして、協会相手に対決を挑んだ貴乃花親方の信念は成果なしだったのか。
「騒動直後となる初場所は5日目からは白鵬(32)、6日目からは稀勢の里(31)と横綱が相次いで休場した。さらに、モンゴル出身の照ノ富士(26)、阿武咲(21)、栃煌山(30)など、十両以上の休場は再出場者を含め11名。戦後6番目にケガの多い場所となった」(相撲担当記者)
途中休場で2横綱を欠いたとはいえ、それでも見るに値する場所でもあった。
「白鵬が横綱相撲としては見苦しいと批判の多かったかちあげ、張り差しを封印し、持ち味を出せないまま自滅したのは印象的でしたが、それ以上に、このケガ人の多さはガチンコ相撲が増えたことを証明している。当たりの強い取組が新たな相撲ファンを虜にしたとも言えます」(角界関係者)
たび重なる不祥事が噴出したにもかかわらず、連日満員御礼が続いたのは、迫力ある取組をファンが支持したことに他ならない。前出・角界関係者が語る。
「一世を風靡したモンゴル勢は暴行事件を受けガタガタ。代わって平幕優勝を遂げた栃ノ心(30)が場所を盛り上げましたが、実はこれまで、白鵬には25戦全敗、鶴竜(32)には1勝21敗とモンゴル勢を極端に苦手としてきただけに、一部では“モンゴルの犬”と嘲笑されていた。場所前に星回しをするモンゴル互助会を毛嫌いしていた貴乃花親方にとっては、理事選の結果はともあれ、明らかな人情相撲が鳴りを潜め、土俵の上は目指す相撲道に近づきつつあるのではないでしょうか」
理事長の椅子は遠ざかったとしても、貴乃花親方が得たものも多かった、とも言えるのだ。