朝食を抜くという簡単な方法から始める「西荻式ダイエット」だが、その有効性を千木良医師が検証した背景には、現役の医師ならではの視点があったようだ。それは自分で血糖値を測ることにあるという。
「人間は体内の糖質を消費して飢餓状態になると血糖値が低くなり、空腹を感じるようになります。それが西荻式ダイエットで朝食を抜き続けている人は、だんだんとおなかが減らなくなるのです。それは体が慣れることに加えて、糖新生回路が動くことでみずから糖質を作り出すから。この状態まで体を持っていければ、朝食抜きの生活はまったく苦になりません。そして血糖値の変化を知ることができれば、自分がどの程度の飢餓状態にあるのか、そして糖新生回路がどれくらい回っているのかを知ることもできるはず。血糖値をモニターしてダイエットに生かすことができるわけです」
しっかりと朝食を抜いて西荻式ダイエットを実践している人の場合、起床後の血糖値は緩やかなカーブを描いて下がっていくが、ある時点で少し数値が上がるという。それは体が飢餓状態を感知し、糖新生回路が動きだした証拠なのだ。
だが、千木良医師の教えに従って朝食を抜いたのにもかかわらず、思うように血糖値が下がらないケースもある。
「子供の頃から朝食を食べ続けてきた人の場合、朝から何も食べないことに罪悪感を覚えてしまうことも。そんな人は『せめて食物繊維だけでも』と言って野菜ジュースを飲んだりするのですが、野菜ジュースには糖分が大量に含まれているので、これでは血糖値が上がってしまい、糖新生回路も止まってしまいます」
西荻式ダイエットでは、とにかく「朝は一切、糖質をとらない」ことが何よりも重要。野菜ジュースはもちろん、サラダでさえも野菜によっては糖質を多く含むものがあり、避けたほうがいいのである。
なお血糖値を測るというと何だか大げさに聞こえるが、実は自分で手軽に測れることをご存じだろうか。糖尿病患者の間では、携帯型の測定器による自己測定がごく普通に行われており、方法は指先から微量の血液を採取し、測定器にかけるだけ。採血は医療行為となるが、自分自身でやる場合は何ら問題はない。
「毎日の食事に合わせて血糖値をモニターすれば、自分の食べた量と質から、血糖値との関係がつかめてきます。そうやって数値で把握できれば、納得して食事の内容をコントロールできるようになるはずです」
千木良医師自身も一日に数回ほど血糖値を測定して、数値の動きをチェックしているという。ちなみに測定器の値段は1万円前後と手頃で、通販サイトで誰でも購入可能。毎回の測定に必要なチップは消耗品で、1回100円強だ。
そのうちダイエット実践者の間で「今日の血糖値どうだった?」といった会話が当たり前になる日が来るのも近いかもしれない。