弘兼 蛭子さんは最初の奥さんを病気で亡くされたそうですね。
蛭子 今から17年前。彼女が54歳の時でした。
弘兼 その2年後に、19歳年下の今の奥さんと再婚されたとか。
蛭子 雑誌が企画したお見合いパーティーで知り合いました。その前にもファンレターをくれた人に会いに行ったり、女性マネージャーにも声をかけたりしていたんですけど。
弘兼 奥さんが亡くなってすぐですか!?
蛭子 そうです。すごく寂しくて、女性がいないとやっていけないと思ったんです。
弘兼 男性の場合、奥さんがいなくなって「やった!」ってうれしく思う人と、ものすごく落ち込む人の二通りありますよね。
蛭子 「やった!」なんて思う人がいるんですか。
弘兼 わりと多いですよ。
蛭子 僕はすごく落ち込んだんですよ。
弘兼 もしかして、独り暮らしは苦手ですか。
蛭子 苦手ですね。
弘兼 僕は独り暮らしが大得意なんです。僕とカミさんは今、別のところに住んでいて、週に1回は会ったりしますが、ふだんは別の生活を楽しんでいます。
蛭子 それだと奥さんが浮気してもわからないじゃないですか。ウフフ。
弘兼 でも、誰にも遠慮することがない独り暮らしはパラダイスですよ。
蛭子 へえー。
弘兼 結婚を卒業する「卒婚」という言い方をしているんですが、一緒に暮らさないで、それぞれ自分の空間で自由に暮らす生き方もいいものですよ。
蛭子 信じられないなァ。
弘兼 蛭子さんは、奥さんとは旅行にも行くそうですけど、僕と同世代の男性は、奥さんを旅行に誘っても「嫌だ」って断られるって。
蛭子 そうなんですか。
弘兼 「あなたと行くなら女友達と行ったほうが楽しい、だからお金だけちょうだい」って。
蛭子 そうですか。俺は旅行に行ったら女房を優先しますね。「路線バスの旅」では自分で好きなものばかり食べてましたけど、女房と行ったら合わせますね。
弘兼 アハハハ。でもいつも一緒にいたら、奥さんから文句を言われませんか。
蛭子 それはあります。俺があまり怒らないから、言いやすいのかなァ。
弘兼 一人だったら、自分が稼いだお金を好きに使えるんですよ。
蛭子 でも、俺一人だったら稼いだお金を全部使っちゃうかもしれないし。
弘兼 それはそうだ(笑)。
蛭子 今はお小遣い制で、奥さんが全部管理してるんです。だからキャッシュカードも持っていません。
弘兼 競艇に行く時は?
蛭子 「小遣いちょうだい」って。
弘兼 1回、100万円くらい持っていかれる?
蛭子 いえ、いつも2万円くらいですね。
弘兼 奥さん、しっかりしてますね。
蛭子 とにかくそうしたほうが丸く収まると思うんです。ケンカがしたくないんですよ。だから全部任せたほうがいいかなって。
弘兼 相当、奥さんの尻に敷かれている感じですけど。
蛭子 何かいいアドバイスはありますか。
弘兼 やっぱりキャッシュカードは自分で持ったほうがいいと思いますよ。
蛭子 でも女房にお金を残してあげないと、怒っちゃうから‥‥。
弘兼 そうか、優しいなぁ。でも、確かに相手を怒らせないように気を遣うことが夫婦円満の一番の秘訣ですよね。
弘兼憲史(ひろかね・けんし) 1947年山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、松下電器産業(現パナソニック)勤務を経たのち、74年に「風薫る」で漫画家デビュー。「人間交差点」で小学館漫画賞、「課長島耕作」で講談社漫画賞、「黄昏流星群」で文化庁メディア芸術祭優秀賞と日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年には紫綬褒章を受章。現在、「島耕作シリーズ」や「黄昏流星群」を連載中。
蛭子能収(えびす・よしかず) 1947年長崎県生まれ。高校卒業後、看板店、ダスキン配達などの職業を経て33歳で漫画家デビュー。現在、俳優、タレントとしても活躍。主な著書に「正直エビス」「ひとりぼっちを笑うな」「蛭子の論語」など。